3月18日に大々的に発表された「POPOPO」(ポポポ)は、「カメラのいらないテレビ電話」をうたう。VR空間内で、3Dアバター同士で音声通話できるスマートフォンアプリだ。
通話がつながると、空間内にそれぞれのアバターが現れ、音声に合わせて自動で動く。カメラも自動で切り替わり、映画の出演者になったかのような雰囲気で空間を共有できる。グループで集まって会話できる他、“視聴者”として会話を見るだけの参加も可能だ。
VRやメタバースと呼ばれるサービスに近いが、このジャンルで成功するのは極めて難しいというイメージもある。米Metaをはじめ、名だたる各社が大規模に投資しては損失を出し、撤退を余儀なくされてきた分野だからだ。
そのジャンルに今、日本から参入するのはなぜか。勝算はどこにあるのか。
開発元のPOPOPO社(資本金:5億円)に個人で全額出資した取締役の川上量生(カワンゴ)氏と、取締役の西村博之(ひろゆき)氏、開発を統括するMIRO氏(岩城進之介氏/「VRM」開発者)に聞いた。
開発の発端を、MIRO氏は振り返る。
「『バーチャルキャスト』のユーザー数が伸びなくて。2018年ごろ、『スマートフォンのバーチャルキャストを考えて』というお題が、川上さんから降ってきたんです」
バーチャルキャストとは、ドワンゴが出資するHMD向けのVRサービスだが、ユーザー獲得・収益両面で苦戦していた(関連記事)。MIRO氏はバーチャルキャストのCTOを務めている。
川上氏は当時、「HMDのVRは、“バ美肉”の世界になる。一般ユーザーが使うものには、絶対にならない」と思っていた。
“バ美肉”とは、「バーチャル美少女受肉」の略。主に男性が、美少女キャラクターのアバターと女性の声を使い、バーチャル空間で活動する行為を指す。熱狂的なユーザーもいるが、老若男女誰しもが夢中になるものではない。
「じゃあ、一般ユーザーが使うVRって何なんだろうと考えて、スマホで動かないとダメでしょうと」(川上氏)
スマートフォン向けVRサービスを検討したものの、課題は画面の小ささだ。スマホ画面にアバターの全身を入れると小さすぎ、没入感が薄くなる。
そこで必須と考えたのが、「気持ちのいいカメラワーク」だ。
POPOPOでは、会話に合わせて顔のアップが映ったり、全身の引きの映像になったりと、自然にカメラが切り替わる。「人間が気持ちいいと感じるカット割り」の再現に最も時間をかけたと、川上氏は話す。
「気持ちいいカメラワーク」は全自動では実現せず、映像クリエイターの手塚眞氏に監修を依頼。「劇場映画1本分」もの手動カットが用意されている。「オートカメラと人間が作ったカットを繋ぎ合わせるようなサービスって、実は今まで無い」と川上氏は胸を張る。
「ホロスーツ」と呼ばれるアバターは、当初から400種類以上をラインアップし、ファッション感覚で着替える前提だ。POPOPOの取締役に名を連ねる庵野秀明氏がアバターの見た目などの調整に関わっている。
広く一般に使ってもらうため、操作も極力シンプルにした。
一般的なVRサービスでは、目的の相手と話すために、近くの床をタップして相手に寄っていく……などの操作が必要だが、POPOPOは移動も全自動。モーショントラッキングも行わず、ユーザーが話すだけでアバターが自動で動く。「勝手にワープした方が便利だから」(川上氏)という発想だ。
3Dアバターでコミュニケーションするサービスは、コントローラーでアバターを操作するものが多い。だが「ユーザーは、コントローラーで移動したいんじゃなくて、友達としゃべりたいだけ。そのゴールに対してどういうアプリにすればいいか。そこを突き詰めた」(MIRO氏)結果が、“会話以外は全自動”の仕組みだ。
しかしそもそも、通話アプリにアバターは必要なのだろうか? 音声通話だけでもいいし、映像が必要ならばテレビ電話アプリでいい。わざわざアバターに動きを付け、VR空間の中で話すことに意味はあるのだろうか――。
記者の疑問に対して、「音声だけでいいんじゃないかという議論はありました」と、MIRO氏は打ち明ける。
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