年々、夏の暑さが厳しさを増す中、ソニーグループの新規事業プログラムから誕生した暑熱対策のウェアラブルデバイス「REON POCKET」(レオンポケット)が人気だ。2025年度の売り上げ(事業全体)は、前年比約1.5倍に伸びており、4月に早くも全国100カ所以上で夏日を記録した今年も身に着けるクーラーの注目は高まっている。23年にソニーからスピンオフして事業を推進するソニーサーモテクノロジー(STTI、東京都港区)は、世界展開も着々と進めている。
レオンポケットは首元に装着し、デバイス本体が接触する背中などの体表面を直接冷やしたり温めたりするデバイスだ。20年に初代製品を発売して以降、毎年性能を向上させた新製品を発売し、主に都市部のビジネスパーソンの通勤や仕事中に利用されている。
最大の特徴は、衣服の中に隠れる点だろう。一般的な冷却装置は空気の量が少ない衣服の中に入れると、冷却を維持する力が下がってしまうので、外からファンの吸排気口などが見えてしまう構造のものが多い。レオンポケットはサーモモジュールや小型大風量のファン、冷却部品を専用設計し、服の中でも冷却性能を維持しているのでビジネスシーンでも活用しやすい。
「17年夏に上海に出張した際の経験が基になった」。STTIの伊藤健二社長はこう振り返る。外では気温が40度近い猛暑の一方、屋内は空調が効きすぎて寒かった経験だ。東南アジアなどに行ったことがある人であれば、誰もが一度は感じたことがあるだろうが、このギャップに問題意識を抱き、テクノロジーでの解決を発想した。
解決手段となる技術にもあてがあった。もともと、ソニーでビデオカメラの商品設計を手掛けていた伊藤氏。カメラの半導体であるイメージセンサーを後ろ側から冷やすことによって、動画の画質を改善する技術を研究していたが、実用化に至らなかった経緯がある。いつか使えるかもしれないと温めていたが、「身に着けて使えるサイズにすれば、いけるんじゃないかと直感した」という。
伊藤氏は上海から帰国後に、すぐにレオンポケットのプロトタイプ作りに着手。ソニーの新規事業創出プログラムの審査を通過した後、19年夏にクラウドファンディングを開始し、わずか6日間で支援額が目標の6600万円に達し事業化が決定した。当時は外で使えるクーラーのような商品があまりなく、「ニーズをうまく捉えることができた」と分析する。
20年にレオンポケットの一般販売にこぎつけた後は21年にレオンポケット「2」、22年に「3」と毎年、ナンバリングシリーズを展開。伊藤氏は「年々暑くなっているので、冷却機能をパワーアップしないと満足してもらえない」と狙いを語る。新商品も完売が続き、事業が一定規模に達したことから、機動力を高めるために23年にソニーから独立。これを機に22年に香港で開始した海外展開も本格化した。
25年にはハイエンドモデル「レオンポケットプロ」を初めて発売し、ナンバリングシリーズとの2モデル展開に踏み切った。プロは24年発売の従来モデル「レオンポケット5」と比べ冷却面積を2倍に増大したのが特徴。欧米市場などではより大きなサイズが好まれる傾向があるため「グローバル展開を念頭に置いた」(伊藤氏)。価格は「5」の税込み1万9800円に対し、プロは2万9700円と高いが、欧州や韓国で非常に販売が好調という。
レオンポケットの販売は外付けセンサーなども含めると4月時点で累計84万点で、今年は早々に100万点の大台乗せを見据える。現在は国内販売が主体だが、「ソニーストア」などを通じ20カ国展開する海外事業の拡大が今後のカギを握る。伊藤氏は「ウエアラブルの要はライフスタイルにいかにフィットさせるか。海外のスタイルを細かく理解することが重要になる」と意気込みを語った。(万福博之)
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