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「BeReal」──若者特有の同調心理を巧みに刺激する“自己露出型サービス”の功罪小寺信良のIT大作戦(3/4 ページ)

» 2026年05月12日 16時15分 公開
[小寺信良ITmedia]

8. 公開範囲は友達、もしくは友達の友達

 公開範囲は相互に承認した友達、もしくは友達の友達に限定できる。とはいえ友達の友達なんて他人も同然なので、多くの人は友達までに設定しているものと思われる。だが実際にはそれでも写真のスクリーンショットが別のオープン型SNSへ転送され、拡散されている。これまでの炎上事件同様、信頼できるはずの友達から漏れるという構造は変わらない。

 一部のSNSはスクリーンショットの通知や抑止策を講じてはいるが、スクショ自体はOSレベルの機能であるため、完全には制御できていない。究極的には、スマホ画面を別のカメラやスマホで撮影することもできてしまう。

 ただスクショ制御だけが問題の本質ではない。その情報を外部に拡散するかどうかは、利用者側のモラルの問題であり、そこは切り離して考えるべきだ。

 BeRealの本質は、虚飾を捨てて現実(Real)を見せ合おうというコンセプトである。だがその思想は、根本的に情報セキュリティと真っ向からぶつかる。

 本来情報セキュリティ的に正しい情報公開とは、

1. 情報を整理する

2. 公開情報と非公開情報を分離する

3. 公開情報から不適切な部分を削除またはマスクする

4. 公開情報の文脈を整えて公開する

という手順を踏む。しかしBeRealはこのステップを行う猶予を与えない、または情報を整理することに対してペナルティを科すため、リアルであればあるほど情報セキュリティの常識に逆行するという宿命を背負っている。

なぜ青少年は「無理強い」を受け入れるのか

 BeRealのユーザーが圧倒的に青少年世代へ偏っているのは、ある意味、学園祭的なノリの延長線上にあるから、というだけでは説明がつかない。そこにはもう少し深い要因があるように思える。

 青少年期は、心身ともに発育期にある。身体の成長は、一般的に17歳〜18歳頃で一旦完成の域に達する。10代前半からこの頃までの間を思春期と呼ぶが、オーストラリアの研究によれば、現代の若者の発達を踏まえれば、10歳から24歳を思春期と定義する説(BBC NEWS JAPANの記事)も登場している。つまり精神的には、24歳ぐらいまでは成長が続いている状態と考えられる。

 この説を採るならば、大卒であれば社会人2年目、短大・専門学校卒なら社会人4年目ぐらいまではまだ思春期ということになる。つまりそれぐらいまでは、何か大人では考えられないことを「やらかす」可能性があるというわけだ。

 今回の情報漏えい事件では、やらかした人の年齢までは明らかになっていない。西日本シティ銀行員、仙台市の小学校教諭の漏えい事件を考えると、概ね22〜24歳、精神的な幅を見てマックス26歳ぐらいと想定しても差し支えないのではないかと思われる。

西日本シティ銀行員の投稿としてXで拡散していた動画(加工は編集部)

 思春期には「自分は何者か」を確立しようとするわけだが、これを内面に求めるのはもう少し先のことで、まずは友人関係、クラス内、サークルやクラブ、SNSなどにおける立ち位置に求めがちである。つまり「他者との関係性の中での自分のポジション」が、イコール「何者か」ということになる。

 ここにBeRealのような、親しい仲間と一斉に同じことをすることを強要されるという、同調性の強いサービスが登場すると、まるで授業や部活への出席が求められているかのように錯覚する。

 反対にこれに抗うには、「排除」を覚悟しなければならない。青少年にとって、自らの意思で「排除」を選択することには、それ相応の意義ある決意と覚悟が必要だ。

 それがないなら、なるべく遅れないように、自分のリアルを共有して仲間と同調しようとする。そこには、「社会人じゃない、本当の自分」の存在確認がある。

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