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日本で培った地震の知見を世界に……とある地震計メーカーの“海外向け公式ページ”活用術ニッチ企業でもできる!IT活用で海外進出

» 2026年05月29日 14時00分 公開
[本村丹努琉ITmedia]

 世界でも高い技術力を持つことで知られる日本企業。ニッチ分野で目立たないものの、高い技術や世界シェアを持つ企業は少なくない。ドイツの経営思想家のハーマン・サイモン氏はこうした企業を「隠れたチャンピオン」と定義し、経済産業省も「グローバルニッチトップ企業」として支援している。

 グローバルニッチは高い技術力を持つ一方で、知名度が実力に比べて劣り、ITを駆使して海外でのブランディングや販売にいかしていることも多い。この連載では、こうした企業のIT戦略をインタビューで深堀りする。

 第13回は地震計や振動試験機などを製造・販売するIMV(大阪市)を取り上げる。同社は7カ国語の公式サイトに工夫をこらし、地震国・日本のノウハウを生かした製品を海外で販売している。

photo 西原弘之執行役員

 同社の西原弘之執行役員は「2025年のミャンマー大地震の際、公式サイトから震源地に近いタイなどから地震計の問い合わせが急増し、恩恵を実感した」と強調する。聞き手は、海外進出する中小企業のブランディング支援などを手掛けるZenkenの本村丹努琉(もとむら・たつる)。

ミャンマー地震で問い合わせ急増、7カ国語対応の公式サイトがカギ

──御社は地震計を国内外で販売しています。概要と強みを教えて下さい

西原弘之執行役員(以下、西原執行役員):当社は振動試験機や地震監視装置、振動監視装置などを製造・販売しています。取引先は自動車や半導体、化学といった製造業や自治体などで、2025年9月期の売上高は179億円に達しています。

 当社の強みの1つは、設定震度にあわせて機器設備を自動制御できる制御用地震計です。制御用地震計は、地震計で振動を感知し、振動の大きさに応じてガス漏れを防いだり、工場の機械を緊急停止したりして損害を防ぐための器械です。

 自社内に地震によって生じる揺れを人工的に再現できる試験装置があり、地震計が地震の振動を正常に観測し続けられるか、不具合が発生しないかなどを評価できます。試験装置では低周波から高周波まで幅広い周波数で振動に関するテストをすることができます。こうした試験場を持つ企業は多くなく、その分、精度の高い製品を製造できます。

photo 振動試験機と地震計

──正確なテストができるから精度の高い製品を製造できるということですね。御社の製品は海外でも評価されています。いつから海外で事業を展開していますか

西原執行役員:93年の台湾を皮切りに、中国、フィリピン、トルコ タイ、インドネシア、韓国、メキシコ、ウガンダなど世界14カ国・地域で事業を展開しています。海外に18ある代理店を通じて製品を販売しており、中国、台湾、インドネシア、タイなどでは展示会にも出展しました。

 中でも、台湾や中国などアジア諸国には半導体など多くの工場があります。地震で被害を受ければ、世界のサプライチェーンが傷つき、巨大な経済損失が出かねません。

──海外進出は事業拡大のチャンスですが、環境の違いから苦労することも少なくありません

西原執行役員:アジアなど海外諸国では、地震に対する理解が進んでいないことが難点です。問い合わせをしてくる担当者も地震へのリテラシーが低いことが少なくありません。

 例えば、日本でいう「緊急地震速報」は海外ではありませんし、「震度」という基準すら知られていません。海外では、政府関係者ですら地震の放出エネルギーを示す「マグニチュード」という用語を使うことが多いためです。しかし、地震対策では、各地点で実際に感じた揺れの強さを表す「震度」の方が重要です。

 こうしたリテラシーの低さは、不十分な地震対策につながります。このため、私たちの海外営業は、地表面の揺れの大きさとマグニチュードの違いを示す資料を持参して説明するところから始まります。震度を基準に揺れの大きさを計測することや制御用地震計の必要性を理解してもらわなければスタートラインに立てないからです。

──海外事業ではITをどう活用していますか

西原執行役員:当社の公式サイトは、中国語やタイ語、ベトナム語、ドイツ語、フランス語など世界7カ国の言語を選択して読むことができます。製造業に特化した有料の翻訳サービスを使って現地語に訳しています。

 当初は無料の翻訳ツールを使っていましたが、間違いや不自然な言葉が散見されました。海外の潜在顧客から問い合わせを増やしたいのであれば、質の高い翻訳をすることが大事だと思います。当社の場合は、それをさらに現地スタッフに確認してもらって修正し、公式サイトに掲載しています。

 問い合わせボタンの位置も重要です。せっかく潜在顧客が自社の製品に興味を持ってくれても、連絡方法がわからなければ意味がないからです。当社の場合、画面をスクロールした時に問い合わせボタンが追従するようにして、潜在顧客がクリックしやすくしました。

 また、当社では海外から問い合わせがくると、その国の担当者にメールで通知するシステムを構築しています。担当者が問い合わせに気づかず、対応が遅くなることを防ぐためです。メールでは現地語の内容と、その日本語訳を見ることができます。潜在顧客と当社の担当者両方の使い勝手を抑止、迅速なコミュニケーションに役立てています。

 その恩恵を特に実感したのは、2025年3月にミャンマー中部でマグニチュード7.7の強い地震が発生した際です。当社が進出しているタイでもバンコクで建設中の高層ビルが倒壊するなど大きな被害が出ました。この出来事が大々的に報道され、タイの企業が自社の工場などの地震対策への関心を高めるきっかけになりました。

 大地震が発生して2週間程度の間に、現地の自動車、化学、航空関係の企業や病院、空港、代理店などから当社へ約20件のメールがありました。地震対策の方法についてインターネットで検索した際、当社の公式サイトを見つけて連絡したのです。地震が起きたことは大変残念なことですが、当社が現地語で読むことができるサイトを持っていなければ、タイでIMVの地震計が使われることはなかったこともしれません。

──御社の場合、現地語の公式サイトが重要な営業ツールになっているということかと思います。今後、改善する予定はありますか

西原執行役員:潜在顧客が公式サイトのどこを見ているのかを分析し、改善につなげようとしています。具体的には、スクロールや特定のページでの滞在時間、リンクのクリックなどエンゲージメントを調べています。分析をすることで「このページは見られているが、問い合わせにはつながっていない」といったことがわかります。

 例えば、当社の公式サイトには「なるほど!地震計」という初心者向けに地震計のことを説明しているページがあります。流入者は多いものの、問い合わせにはつながっていません。今後、こういった流入の多いページをどう販売につなげていくかが課題の1つです。

 また、現状の地震計の一覧ページは文章ばかりが多く、わかりづらい面があります。今後は特徴を箇条書きにした選定ガイドをつけ、誰でも自分の現場に適した製品を選べるように改善したいと考えています。

 リアルでもWebでも相手がストレスを感じず、楽にできるようにしてもらえるように努力することが大事です。つまり、CTRの分析も顧客サービスの一環です。海外の潜在顧客にとっては、日本企業の当社に問い合わせること自体にハードルがあります。質の良い製品はもちろん大事ですが、質の高い顧客対応も潜在顧客を実際の顧客に変える力を持っていると考えています。

photo 同社公式サイトの問い合わせ窓口

著者プロフィール:本村丹努琉 Zenken取締役

通信機器販売やエネルギーコンサルティングなどのベンチャー企業3社で営業責任者として組織構築に従事。1人のカリスマだけに頼らない組織営業スタイルを確立し、収益増に貢献した。2009年に全研本社株式会社(現:Zenken株式会社)に入社し、ウェブマーケティングを担当する「バリューイノベーション事業部」(現:グローバルニッチトップ事業本部)の立ち上げに参画。コンテンツマーケティング黎明期から、オウンドメディアを基軸とした WEBブランディングを提唱し、14年間で約8000社のインサイドセールスを構築した。

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