Apple抜きの「Power連合」、再結成の狙いは?
米IBMとFreescale Semiconductorはプロセッサ設計の取り組みを緊密に連携させ、Powerプロセッサアーキテクチャの普及促進を目指す方針だ。
両社の上級幹部が2月6日、提携を発表した。この提携により、両社は共通のPowerアーキテクチャ命令セットを開発し、プロセッサのロードマップを統合したい考えだ。
さらにFreescaleは、Powerプロセッサの普及促進に向けて結成されたオープンな開発組織Power.orgにも参加する。
今回の提携は、特に企業向けコンピューティングとゲームシステム市場で優勢を誇るIBMと、ネットワーキングや通信、自動車などの市場で優勢を誇るFreescale、それぞれの現在の市場での立場を強化し、また、新規市場をより一層積極的に追求することを目指したものだ。
両社は単独の顧客ではなく、多くの顧客、特に家電分野の多くの顧客に支持されたいと考えている。
FreescaleのCEOマイケル・メイヤー氏は共同記者会見で次のように語っている。「今後、両社のエンジニアは共同で作業する計画だ。実際、われわれはかつて何年間かにわたり、双方の製品の相互互換性を維持するために両社のエンジニアが共同で作業していたこともある」
「だが、われわれが連携し、プロセッサ開発作業を共同で進めることは、われわれの顧客にとってもプラスの影響をもたらすはずだ」と同氏。
事実、IBMとFreescale(当時はMotorolaの半導体部門だった)はかつて、Apple Computer向けのPowerPCプロセッサの設計で協力していたことがある。
だがその後、両社の提携関係は次第に消滅し、両社の接点もほとんどなくなっていった。
IBMは高性能サーバを追求し、プロセッサ設計とファウンドリサービスを始動し、PowerPC設計の一部をライセンス供与し、また、ゲーム機メーカーの任天堂やソニー、Microsoftとの間で新たな取引を確立していった。
一方のFreescaleは、ネットワーキングと自動車の分野で事業を推進した。メイヤー氏によれば、2007年までに世界の自動車の約半数にPowerPCプロセッサが搭載されることになる見通しという。
だが、AppleをIntelに奪われたことは両社にとって痛手だった。Appleは両社にとって最も大規模なプロセッサ顧客の1つだったからだ。
Appleは2006年に入り、Intelのx86プロセッサへの移行を開始しており、2007年半ばまでには移行を完了する計画だ。
だがメイヤー氏とIBMの技術&知的所有権担当上級副社長ジョン・ケリー氏はどちらもこの損失を重く受け止めず、おかげで、家電市場のデジタルガジェット向けの新興市場など、そのほかの分野の利益追求にリソースを充てられるようになったと語っている。
「顧客を失うのは嬉しいことではない。だが、Intelとの競争にリソースを使うのはわれわれにとっていいことではなかった。それはAMDに任せた。AMDは善戦している」とメイヤー氏。
両社は今後、より緊密に連携することになるが、サードパーティとの提携強化にも努める方針だ。
両社の提携のもう1つの要素としては、ソフトウェアの共同開発が含まれる。
両社はPowerプロセッサ上でのLinux OSの利用を促進するための正式な取り組みを発足させる計画だ。
さらに両社はPower.orgのメンバーとして、他社とも協力する方針だ。
Powerアーキテクチャをよりオープンにするための動きを進めていたIBMは、2004年遅くにPower.orgを設立した。
同社によれば、オープンなプロセッサでは、多数の陣営がハードウェアやソフトウェア、およびそのチューニングでより緊密に連携できるため、システム全体の設計が改良され、ひいては性能の進歩が促進される。
Power.orgはPowerアーキテクチャに関する仮想コミュニティーとしての役割を果たしている。Power.orgがデバイスメーカー各社にPowerベースのプロセッサコアを提供し、メーカー各社はそれに自社独自またはサードパーティの各種要素を追加できる。また、デバイス設計と製造サービスを確実にすることで、システムをゼロから構築する必要を排除できる。
だがPower.orgには、Powerプロセッサ技術の舵取りの役割もある。特にFreescaleが参加したとなれば、なおさらだ。Power.orgへの参加に際し、Freescaleには創立メンバーとしての資格が与えられている。
「IBMやそのほか各社と協力するためのプラットフォームとして、このオープンコミュニティーを活用するつもりだ」とメイヤー氏は語っている。
今回の参加により、FreescaleはPower.orgのPower Architecture Advisory Council(PAAC)などの取り組みにも加われることになる。PAACはPowerプロセッサアーキテクチャのロードマップを管理したり、メンバーからのフィードバックに基づき変更を加えたりといった作業を行っている。
「PAACはインプットを受け付け、変更を決定し、それをコミュニティーに戻している。われわれはPowerアーキテクチャの分裂を防ぎ、アプリケーションやクライアントがそれぞれ異なる種類のアーキテクチャを扱うようなことが起こらないようにしている。多頭の怪物にならないよう管理しているのだ」とケリー氏。
なお、今回の提携はIBMやFreescaleの既存製品、あるいはそうした製品を利用する顧客に直ちに大きな変化をもたらすものではない。
IBMは例えば、Power6サーバプロセッサの詳細を発表するだろう。
両社幹部によれば、両社は後日、製品計画も含め、今回の提携に関する詳細を発表する予定という。
メイヤー氏はFreescaleがCellプロセッサのライセンス供給は行わない可能性を示唆している。CellはIBM、ソニー、東芝がゲーム機やそのほかの家電製品向けに開発したプロセッサだ。
だが同氏によれば、Freescaleはいずれ補完的なプロセッサを開発することになる可能性もあるという。
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