シャープの東芝PC事業買収に見え隠れするホンハイの意志(1/3 ページ)
シャープによる東芝のPC事業買収。
かつてグローバルでもトップのノートPCメーカーとして栄華を誇り、マイクロプロセッサや基本ソフトの調達も含め、大きな発言力を業界内でも持っていた東芝のPC事業が、鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のシャープに買収される(株式譲渡日は10月1日)。このことについて、業界内がざわつくのも当然のことだろう。
2015年の東芝不正会計事件における震源地ともなった東芝のPC事業は、子会社化を通じてさまざまな合理化を図ってきたというが、その後も回復のめどが立つどころか、日本国内のPC事業再編の枠組みに入ることもできず、財務は痛み、東芝傘下での再建が難しい状況となっていた。
では、シャープは東芝のPC事業をなぜ取得しようと考えたのだろうか?
この買収劇は“シャープ主体”というよりも、その親会社である鴻海の考えが反映されていると考えるべきだろう。鴻海はPCやスマートフォン、タブレットなどの生産委託で伸びてきた会社だが、東芝ブランドを獲得することでノートPC事業にもその足場を広げることができる。
加えてノスタルジーな感情を捨てて冷静に判断するならば、東芝クライアントソリューションにとっても大きなプラス要因となるだろう。同社が持つ「dynabook」ブランドは日本国内でしか利用できないが、1994年〜2000年までラップトップ/ノートブックPC市場で世界ナンバーワンであり続けた「TOSHIBA」の価値は大きい。
なぜなら、鴻海にはグローバルでのノートPC市場で勝負できるだけの事業基盤があるからだ。この買収がうまく進めば、再び「TOSHIBA」のバッジを付けたノートPCが、世界中で使われるようになるかもしれない。
過去の強みを失った「dynabook」
まず、基本的な部分を復習しておこう。
シャープは東芝のPC事業専門子会社である東芝クライアントソリューションの発行株式のうち80.1%を取得するが、その金額はわずかに40億500万円でしかない。総資産額398億8900万円のおよそ10分の1の金額で取得することになる。
数字だけではバーゲンセールにも見えるが、東芝クライアントソリューションの売上にはまったく回復の兆候が見られない。年間の売上は、東芝の新たな子会社として設立される前の16年3月期には1900億円を超えていたが、その後は17年3月期で約1650億円、18年3月期は約1466億円と減少を続け、赤字を拡大していった。総資産額は直近の1年間だけで100億円以上も目減りしている。
この間、同社は企業向け事業への集中や人員の再配置、営業拠点の集約、開発生産委託の見直しを進めつつ、他社との事業再編も視野に入れていたとのことだが、数字を見る限り改善は見られなかった。他社との事業統合の話がまとまらなかったことも同社の問題が足元の業績悪化だけではないことを示している。
東芝の不正会計の舞台でもあったPC部門は、かつての栄華の面影もなく、事実上、海外事業は存在していない。かつての東芝製ノートPCの強みは、海外に大きく事業を展開できるスケーラビリティーを元にした調達力やコスト競争力、開発力だった。しかし、現状そうした強みは完全に失われている。
一方で17年11月には富士通と中国レノボが合弁会社を設立。レノボは独自ブランド、旧IBM系の「ThinkPad」ブランド、そして傘下のNECブランドも含めてグローバルでの競争力を高めてきており、東芝クライアントソリューションが2000人を超える従業員を抱えたまま単独で成長を目指すのは極めて難しい状況だった。
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