カスタマイゼーションからパーソナライゼーションへかじを切るデルの近未来:青山祐介のデザインなしでは語れない(3/3 ページ)
語られるようでいて実は語られていない、PC・周辺機器のデザインにフォーカスした本連載。今回はPCのプロダクトデザインに力を入れるデルのデザイン戦略にフォーカスする。
デスクトップPCにもカラバリとガラバリの波が来る
カラバリやガラバリの採用が当たり前となったノートPCだが、デルではさらにその先の取り組みを行っている。例えば、新モデルであるStudio XPSシリーズでは、ハイグロスな黒い天面とヒンジ部にあしらわれたリアルレザーのパッドが醸し出す高級感が印象的だ。
佐々木 Studio XPSは使い勝手だけでなく、モノとして持っていて満足感が得られるような、大げさにいえば“所有する誇り”のようなものを感じてもらえるものとして作りました。ヒンジ部の黒い革は本革で、使い込むほどに味が出て愛着がわいてきます。またヒンジの左右にはホワイトシルバーのパーツを配することで、より黒い革とグロスブラックの天面を引き立てるようにデザインされています。
細かいところでは、液晶ディスプレイの額縁部分をフラットにした「Edge-To-Edge」デザインを取り入れたり、光学ドライブをスロットインタイプにしてメディアの出し入れをスマートに行えるようにしたりするなど、フラッグシップにふさわしい作りにこだわっています。もちろん、使い勝手への追求も忘れてはいません。キーボードにバックライトが付いていて暗いところでも操作ができるようにしていたり、本体を閉じたままでもバッテリーの残量が分かるように、ヒンジの側面に残量表示ランプを付けたりしています。
一方、カラバリやガラバリ展開はノートPCだけでなく、デスクトップPCにも広がっている。中でも注目は「Studio Hybrid」で、ボディのコンパクトさや、ユニークな形状はもちろん、6色のボディカラーに加えて本物の竹を使った「ナチュラルバンブー」というボディカバーも選べるのが目を引く。竹というとアジアンテイストなイメージがあるが、実際のところはどうなのだろうか。
添田 竹を使うというコンセプトは、オースティンのチームから出てきました。もともとこのモデルは、どのような個人のお客様の使い方にも合う小さなデスクトップPCというコンセプトだったので、パーソナライゼーションという見方でボディカラーも増やしていく中で、遊びの要素として竹という素材を用意したのです。
加工にはとても手間がかかっています。ですから1万2000円という価格のほとんどが加工費ですね。我々は、コレでほとんど利益がありません(笑)。
このナチュラルバンブーは、BTOメニューの中でプラス1万2600円のオプションとして選択できるようになっていて、すでに販売されたStudio Hybridの中では1割程度のユーザーがバンブーを選んでいるという。このカバーは竹の集成材を曲げて作られており、中央にある「DELL」のロゴは彫られており、焼き印をイメージしているという凝りようだ。また、2008年12月には、限定100台で合成レザー素材を用いたブラックレザーとブラウンレザーの2モデル「Studio Hybrid レザー仕様特別パッケージ」が発売され、好評のうちに完売したという。
カスタマイゼーションからパーソナライゼーションへ
以前からデルのプロダクトは比較的、黒やダークグレーを基調としたイメージのものが多かった。しかし2年前の組織改革から始まったデザインスタンスの変革によって、ユーザー層にも変化が現れてきていると佐々木氏は語る。
佐々木 2007年にInspironで始めたカラーバリエーションですが、Inspiron Miniには赤やピンクといった色もあることで女性ユーザーが増えてきています。特にInspiron Miniには女性ユーザーが多いですね。手ごろな価格でインターネットができ、好みの色が選べるというのは、まさに女性のニーズにピッタリだったのかもしれません。さらに、同時期から量販店での在庫販売を開始したことも少なからず影響していると思います。女性ユーザーはどちらかというとオンラインでPCを買う方は少なく、圧倒的に店頭で見て買っていくという方が多いのです。
このようなユーザーの嗜好(しこう)の変化を敏感に感じとり、次々と新しい製品に反映していくのがデルのプロダクトラインだ。前述の「Adamo」や日本にも市場投入が期待されるゲーミングPC「Alienware」といった製品は、機能もさることながらそのデザインがオーナーマインドをくすぐるものになるはずだ。
こういったデルのデザイン展開を、添田氏は「パーソナライゼーション」と表現する。
添田 これまでデルはオンラインのBTOで、HDDやCPUをお客様のニーズに合わせて「カスタマイゼーション」できるようにしてきました。デザインもこうしたBTOの選択肢の1つだと思います。プロダクトデザインという意味でPCの歴史はクルマや家電製品と違い、まだまだ歴史が浅く成熟していません。ユーザーニーズの変化もとても速く、あらゆる志向や興味に応えられるように製品のラインアップを増やしていく必要があります。だからこそ、今後のデルの進む道はこれまでのカスタマイゼーションは残しつつ、よりユーザーに合った“パーソナライゼーション”を推し進めていく方向になるでしょう。デルはお客様のニーズにマッチしたお客様のためのブランドだと思っていますから。
佐々木 デルはお客様のさまざまな声に耳を傾けながら、常に変わっていくスタンスを持っています。そういう意味では、常に進化し続けるのがデルなのです。
カスタマイゼーションからパーソナライゼーションへかじを切ったデルの取り組みは、着実に製品に反映されている。インタビューの中に出てきたAdamoやAlienwareといった今後投入されるであろう新ラインアップについても期待がふくらむばかりだ。
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