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「壊れたら買う、じゃなくて、直す!」な中国の“デジモノ修理屋”稼業山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

中国の電脳街に必ずあるのが「修理屋」だ。「レノボとHPの専門店」しかない中国の奥地でも、修理屋だけはやたらといる。中国のデジモノユーザーをしっかり支える彼らの仕事を調査した。

 中国で購入したいろんなデジタルガジェットを使い続けているが、数年使えばガタがくる。日本ならガタがくる前に最新モデルを購入するが、ガタが来たら直すのが中国だ。そういうときに頼りになるのが、電脳街に数多く存在する「修理屋」だ。中国デジモノユーザーに欠かせないが、その素性が日本で紹介されることが少ない、デジモノ修理屋の活用術を紹介しよう。

そこまでチェックしなくてもいい、PCの修理屋さん

 筆者が購入したレノボのデスクトップPCの中身を最新パーツにアップデートした時に利用した中国電脳街のPCパーツショップの利用術はこちらでも紹介しているが、このときに余ったPCパーツを使ってもう1台PCを組んでみた……が、どうにもこうにも起動してくれない。そこで電脳ビルの中にある修理屋さんを訪れた。

 店内には、受付兼技術者の担当者と相談するためのカウンターがあり、店の大きなショーケースには、液晶“パネル”(ディスプレイでないことに注意)や、ノートPCのシステムボード、ノートPCのキーボードなど補修部品や、セキュリティソフトのパッケージが並べられている。壁には「当店は明朗会計!心配ない!」といわんばかりに修理費用の価格一覧が掲げてある。このように、修理屋の基本店内レイアウトは「補修部品を並べたショーケース」「修理価格表」「カウンター」(もしくは円卓)となる。

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店内に並んだノートPCのシステムボード(写真=左)。対応できる修理内容とその価格のリストが掲示されている(写真=右)

 そんな修理屋さんに入ると、「ウェイ!」という言葉とともに奥から作業着を着た担当者が出迎えてくれる。彼にトラブルの状況を説明すると「じゃあ、ちょっと見るよ」と店員はいい、持参したデスクトップPCを奥に持っていった。このとき、客も一緒に作業場についていけるので、「仕事の現場」をじっくりと観察できる。担当者はしばらくデクストップPCの動作を調べると、「この状況なら2時間後にまた来てよ。たぶん直るから」と言って作業を続けた。店の壁は全面ガラス張りで作業場の状況がよく分かる。この店に限ったことではなく、電脳ビルにある多くの修理屋さんが、日本のショッピングセンターにある料理教室や“手打ちうどん”のように作業の状況が外から見えるようになっている。

 担当者の説明では、「搭載しているPCパーツを正しく組み直すだけ」という単純な作業……のはずだったが、担当者はWindowsを起動させると、筆者のプライベートなファイルをチェックし始めた。おいおいおい、勝手に人のファイルを見てもいいのかね。実をいうと、過去にも香港の有名な俳優がPCの修理を依頼したら、その修理屋さんが依頼主と香港の女優数人との“不適切な関係”を暴露するというスキャンダルがあったくらいで、どうも中国の修理屋業界における“倫理基準”では、作業中に人のプライバシーデータをチェックするのがデフォルトらしい。筆者も、これを見て「ありがとう、もういいよ」と作業をストップさせた。ここまでの修理代は50元(約700円。下手すればその都市に住む労働者の平均日給に相当する)。

意外と整然とした修理作業の現場。ガラス張りでカウンターからよく見えるし、依頼者がそこまで入室することもできる
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