「壊れたら買う、じゃなくて、直す!」な中国の“デジモノ修理屋”稼業:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
中国の電脳街に必ずあるのが「修理屋」だ。「レノボとHPの専門店」しかない中国の奥地でも、修理屋だけはやたらといる。中国のデジモノユーザーをしっかり支える彼らの仕事を調査した。
さすがしっかりしている“独立系”修理屋さん
あるとき、筆者が所有する液晶ディスプレイが電源を入れると数分で暗くなる症状に見舞われた。おそらくバックライトが切れたのだろう。このときも、修理屋さんのショーケースに液晶パネル“だけ”が陳列されていたのを思い出して、彼らに再生をお願いしてみた。筆者が滞在する中国奥地の電脳街にも、数多くの修理屋さんが存在する。今回は、メーカー系列に属さない“独立系”に飛び込んでみた。
受け付けスペースの配置は「カウンター」「サービス価格表」「円卓」「ショーケース」とメーカー系と同じだが、“独立系”だけあって、7人もの技術スタッフをそろえて、それぞれが作業を行っている。これだけのスタッフをそろえている修理屋さんはあまりない。
担当者の見立てによると修理には数日かかるらしい。きょうのところは液晶ディスプレイを預けることになる。その場で簡単なフォームに修理依頼を書き、受領証をもらってその日は帰宅した。後日、修理屋に出向き、受領証と引き換えに修理が終わった液晶ディスプレイを受け取ることになる。
修理は成功したようで、筆者の液晶ディスプレイはいつまでも明るく表示されていた。今回の修理代は120元(約1700円)。その土地ではおよそ2日分の平均日給に相当するが、それでも、新しい製品を買うより安上がりだ。
精巧なUMPCも修理屋で再生できるか?
筆者が“中国産”のUMPCを購入するため家族会議まで開いたいきさつは、連載のこちらでも紹介している。こうして、いろんな意味で苦労して手に入れて、こちらとこちらのレビュー記事でも紹介したファウンダー製UMPCの調子が悪くなった。
精巧な超小型のUMPCだけに、普通の修理屋さんでは無理だ。それなのに、どんなに小さな修理屋さんも「できる!」と根拠のない無責任な返事をしてくれる。もっとも、それ以前に「倫理基準」で預けること自体がリスキーだ。試しにファウンダーの公認修理屋さんを探してみると、なんと、中国奥地の電脳街にもかかわらず、ファンダー配下の修理センターなるものが存在していた。そこは小さな部屋に受付が2人だけという陣容だ。カウンターで「購入したUMPCが故障したみたいだが」というと、ここでも奥の作業場に通された。あとは、「症状を修理依頼書に書いて、製品を渡して、修理ができたらユーザーが取りに行くか配送してもらう」という流れになる。
ファウンダーという中国では大手の系列にある修理“センター”なのに、作業場はオフィスというより民家のような間取りだ。ただ、確かにファウンダー製のデスクトップPC、ノートPC、それにプリンタまでが修理されるのを“待っていた”。作業場にいたのはたった1人の技術スタッフだけ。その担当者は、筆者が持ち込んだUMPCを知らないようで、「なんだこれは?」と筆者に聞きながら本体をいろいろいじり倒している。その一方で、別のノートPCで株取引を行っていたりする。合間に行っているのが修理なのか株取引なのかは分からない。
結局、その担当者は持ち込んだUMPCの問題を1つとして解決することはできなかった。それどころか、北京にあるファウンダー本部に問い合わせることも、上位レベルの修理センターに発送するための手続きもしてくれない。中国奥地にあるファウンダーの修理センターは「何もできない」ところだった。
ちなみに、筆者のVAIO type U(初代)が故障したとき、内陸奥地にあるソニーのサポートセンターに修理を頼んだことがある。そこの担当者は慣れた手つきで簡単にチェックして、その上で修理依頼書などの手続きを指示してくれた。このあたりに、メーカーによるスタンス(やる気?)の違いが出ているのかもしれない。
筆者が中国で利用した修理屋さんはすべて、滞在している内陸奥地にある都市に存在していたが、中国全土には、内陸部だろうと沿岸部だろうと、上海だろうと北京だろうと、同じように数多くの修理屋さんが存在する。PCの普及率がまだまだ日本に及ばない中国で、PCを扱う修理屋さんがこれほど多く存在する背景には、中国人の“物持ちのよさ”に加えて、所得に比べてまだまだ高価なPCを少しでも長く使おうとする心理がある。
今回紹介したPCや液晶ディスイプレイの修理以外でも、ノートPCのバッテリー駆動時間が短くなったときに、修理屋でバッテリーパックの再生を頼んだこともある。よく依頼される作業らしく、迷うことなくバッテリーの卸業者に電話で問い合わせて「在庫があるので作業できるよ」と簡単に対応してくれた。起動が鈍くなったデジカメも修理屋で直してくれた。このように、何でも臨機応変に修理できる人材が、“場末の”修理屋ほどいたりする。
何でも直せる高い技術力を有しているのか、簡単に直せるシンプルな構造なのか、そのあたりは深く考えないことにして、修理屋たちは、広大な中国全土できょうも人民の要求に応え続けている。
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