キルギスのインターネットカフェに潜入した:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
キルギスとウズベキスタンの騒乱が日本でも報じられている。現代の民族運動ではインターネットが大きく影響するが、両国ではちょっと事情が異なるようだ。
店によって“思いっきり”変わる利用料金プラン
キルギスのインターネットカフェ利用料金は、基本1時間50円~100円で夜間は若干安くなる。「1Mバイトあたりの価格」というデータ従量制の店も結構あった。キルギスではインターネットカフェを利用するときに、ネットワークにアクセスするためのアカウントナンバーとパスワードが記された「インターネットカード」が渡されるが、そのカードが時間従量制かデータ従量制かで、利用料金が“極端”に変わる。
キルギスの首都ビシュケクで、中国からやってきた滞在者がSkypeで故郷の知人と通話をしたあと、利用料金の支払いで多額の請求を突きつけられて店員と口論している場面に出くわした。キルギスでインターネットカフェを利用する場合、Skypeや動画共有サイトなどへアクセスする場合は利用体系を確認するなど十分な注意が必要だ。
インターネットカフェ以外にも、大都市の高級ホテルやごく一部のレストランでは、無線LANでインターネットにアクセスできる。とはいえ、富裕層でもない限り「レストランで外食」は困難な庶民がレストランでノートPCを広げてインターネットにアクセスすることはまずありえない。
キルギスもウズベキスタンも、インターネットカフェに設置されているPCの台数はだいたい10~20台程度で、席の間に簡単な仕切りを設けた店もあれば、完全なオープンスペースとなっている店もある。利用客はキルギスでモンゴル系のキルギス人とロシア人が多く、ウズベキスタンで中東系のウズベク人とロシア人が多いが、あくまでも多数派というだけで、どちらの国も多くの人種がインターネットカフェに集まってくる。
中央アジアのみんなが利用するのはロシアのポータルサイト
両国を含めた旧ソ連の国々では、自国の言葉と別にロシア語が広く使われることから、キルギスのPCにはキルギス語とロシア語が、ウズベキスタンのPCにはウズベク語とロシア語がインストールされている。日本語が利用できるPCは、ウズベキスタンの首都タシケントにあるJICAが運営する「日本センター」など極めて少ない。
キルギスでもウズベキスタンでも、最も多く使われているのが「mail.ru」というサイトが提供しているWebメールサービスだ。インターネットカフェを利用する女性ユーザーの多くがmail.ruやニュース系Webページしかアクセスしない。一方、男性ユーザーはmail.ru以外にもオンラインゲームや共有サイトの音楽を楽しんでいたりする。
mail.ruは、SNS的な要素もある総合ポータルサイトだ。全世界のウェブサイト情報や利用状況を調査するAlexa Internetによると、ロシアでアクセス数第3位の人気サイトとなっているほか、バルト3国を除いた旧ソ連の国々ではいずれも5本の指に入る。特にカザフスタン、ウズベキスタン、アゼルバイジャンなどでは1位と中央アジアで人気が高い。キルギスでも3位という。
キルギスもウズベキスタンも、インターネットカフェに設置されたPCに、個人が作成したリポートのワードファイルとエクセルファイル、個人が撮影したデジカメの画像が、マイドキュメントフォルダに“どっさり”保存されていた。インターネットが家で使えないから、インターネットカフェでリポートを書いてネットワーク経由で提出したり、写真を自分のWebページやブログにアップロードするのに使っているのだろう。それにしても無防備すぎる。
無防備といえば、インターネットネットカフェのPCだろうと、個人のPCだろうと、写真現像屋のPCだろうと、USBメモリを差すと、もれなくウイルスに感染する。海賊版が普通に販売されているキルギスとウズベキスタンでは、セキュリティソフトも海賊版を利用する。さすがにロシア人が使うビジネスPCには正規版がインストールされていた。そういう事情を反映してか、PCショップではロシアの「カスペルスキー」のみが売られていた。
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