レビュー

たった1700円で最高のクラウド世代Mac OSが手に入る――「OS X Mountain Lion」ついに解禁(4/4 ページ)

ついに待望の次期OS「OS X Mountain Lion」がリリースされた。細かい改良を重ね、200を超える新機能でブラッシュアップしたMoutain Lionは、iCloud連携でiOSの勢いも取り込み、さらに進化していく。その特徴を林信行氏が解説!!

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きめ細かな改良が盛りだくさん

 冒頭でも紹介したが、OS X Mountain Lionには200以上の新機能がある。

 どの機能が最も便利に感じるかは人によって違う。タイムマシンで複数のバックアップ先を指定できることに大喜びをする人もいるだろう。マルチディスプレイ環境のすべてのディスプレイでフルスクリーン表示ができるようになり、再びマルチディスプレイで作業をする人もいれば、Game CenterでiPhoneやiPad間の相互呼び出しが可能になったのを機に家族でゲーム対戦を楽しむ人もいるだろう。QuickTimeでのH.264書き出しにハードアクセラレーションがかかったのを機に動画共有の機会が増える人もいるはずだ。

 ここですごく細かいことをいえば、「別名で保存」をする機能が隠れキーボードショートカットで復活したことを歓迎する人もいるに違いない(コマンド+option+shift+S)。1度はOS X Lionでこの機能がなくなったため、変更を加えた書類を別のファイルとして保存するには「複製」をするしかなかった。だが、複製をしてしまうと「…のコピー」という書類名になってしまい、これをもっと見栄えのする名前に変えたい場合は、いちいちFinderに切り替えて書類名を変える必要があった。Mountain Lionでは、秘密のショートカットを使って別名保存する以外に、書類ウィンドウのメニューからファイル名を変更することもできる。

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別名で保存のショートカットが復活。コマンド+shift+option+Sで「別名で保存」機能を呼び出せる(画面=左)。開いている書類ウィンドウのタイトル部分からメニューを表示し、ファイル名を簡単に変更できるようになった(画面=右)

 山ほどある小さな改良の中で、筆者のお気に入りは「共有」メニューにAirDropが組み込まれたことだ。AirDropはOS X Lionから搭載された便利なファイル転送機能だが、あまり回りで使っている人を見かけない。

使うとすごく便利なのに、なかなか認知度が上がらない不遇の機能「AirDrop」。Moutain Lionでは「共有」メニューという目立つ場所に置かれたので、今後ユーザーが増えてくるものと期待したい

 AirDropを使えばMacどうしが相互に無線LANで直接接続してファイルを交換できるが、これまでは両ユーザーがFinderウィンドウの左側でAirDropを選択して接続するのを待ってから作業する必要があった。

 OS X Mountain Lionでは、送りたいファイルを選び、コンテクストメニューの「共有」から「AirDrop」を選択するだけで送信準備が完了する。後は相手がFinderのタブで「AirDrop」を開けば、即ファイルを転送できる。

 もちろん、すぐに分かる変更だけがすべてではない。後からジワジワと効いてくる変更も多い。その最たる例が「Gatekeeper」機能だろう。Macはもともと圧倒的にウイルスやマルウェアが少なかったが、それでもOS根本部分の仕組みとして、アプリケーションのトレーサビリティ(誰がそのアプリを作ったか)をはっきりさせるGatekeeperという機能を組み込んだ。この、悪いアプリケーションの流通を断とうという革新的な試みは、今後のパソコン史に残るターニングポイントとなるかもしれない。

林信行氏が注目する新機能トップ5

 こうした細かい機能を1つ1つ挙げていくときりがなく、超絶に長いレビュー記事になってしまうので、その役割はアップルの公式Webページに譲りたい。

 その代わりに、OS X Mountain Lionを使うことで、筆者が個人的にどんな風に素晴らしいと感じたか、トップ5の項目を挙げてみると、以下のようになった。

1)iCloud完全ネイティブ対応で、iPhone/iPadを自由自在に行き来し、気分にあわせたスタイルで作業ができるようになる

2)iCloud完全ネイティブ対応で、Mac環境そのものの移行も簡単になる

3)フル画面状態で仕事に没頭をしていても、大事なスケジュールや大事な相手からメールを受信すると、それを通知センター経由できちんと知らせてくれる(だからこそ、時計も表示されないフルスクリーンモードで作業に集中できる)

4)TwitterやFacebookとの連携がとにかく圧倒的に簡単で、ストレージの整理中にQuickLookで見つけた懐かしい写真や、Mac App Storeでダウンロードしたおすすめのアプリケーションまで、見つけた面白いものを片っ端からつぶやきたくなる

5)Webで見つけた面白いページをリーディングリストに登録したり、ほかのMacから開いたりといった形でより役立てやすくなる

 2つ目はあまり説明しなかったが、Apple IDとひもづけることでMacのさまざまな初期設定が簡単に移行できるようになった、ということだ。

 OS X Mountain Lionのインストール後、Apple IDとしてiCloudのメールアドレスを入力すると、さっき買ってきたばかりの新品のMacでも、すぐさまこれまでのMacと同じメールの受信設定、同じアドレス帳一覧、同じ予定が書き込まれたカレンダー、リマインダー、メモ、ゲームセンター設定、iMessageでやりとりしたメッセージ、Facetime、Mac App Storeの設定、Safariのブックマーク、iTunesやFacetimeの設定がされた、勝手知ったるMacに切り替わる。

 そう、OS X Mountain Lionは、初のiCloudネイティブなOSなのだ。

 え? iCloudってすでに対応していなかったっけ? そう思う人がいるかもしれない。しかし、実は前バージョンのOS X Lionがリリースされたのは、iCloud登場の3カ月以上前。これまでのiCloud対応はアプリケーション単位だった。つまり、iCloudを前提に作られたMac用OSは、実はこのOS X Mountain Lionが最初なのだ。

 クラウドを前提にしたOSはほかにもあるが、アップルはクラウドを前提にしたOSを用意する一方で、高速なSSDやこれまでにない解像度のRetinaディスプレイを搭載したMacで、パソコンというものをこれまでとはまったく異なる製品に昇華させようとしている。

 スマートフォンやタブレットといったカテゴリの製品が急速に伸びているいま、パソコンもタブレットも同じOSにしたほうがいいという考え方もあり、実際にマイクロソフトのWindows 8はそうしたアプローチを取っている。

 これに対してアップルは、屋外で情報の消費や簡易入力がメインになるポストPC機器にはiOSをベースにしたiPhone、iPad、iPod touchを提供し、その一方でパソコンであるMacには、iOS機器を圧倒的に上回るハードウェアスペックと寝る間(スリープをしている間)も仕事を休まない強力なOSを用意して、この両者をiCloud経由でとてつもなく簡単に連携させるアプローチを取ったというのは興味深い。

 どちらの戦略が正しいのか、それが分かるのはこれから5年10年先のことかもしれないが、現在のiPhoneやiPadの圧倒的な勢い(世界中にはすでに4億1000万台のiOS機器が存在する)を考えると、これらのユーザーがどのパソコンを選べば得が多いかはハッキリしていそうだ。

 OS X Mountain Lionの価格は1700円で、提供はMac App Store経由のみ。アップグレード対象のOSには、LionのほかにSnow Leopardも名を連ねている。なお、前バージョンのLionからアップグレードする人は、何か問題が発生して前のOSに戻したいと思っても、CD-ROMがないために戻すのが難しくなってしまうので、特殊なアプリケーションをたくさん使っているなどの理由で心配な人は、アップグレードをする前にTime MachineでOSを含めた完全バックアップを取っておいたほうがいいかもしれない。

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