「VAIO Duo 11」の“上質なスライドボディ”を丸裸にする:完全分解×開発秘話(前編)(7/7 ページ)
Windows 8とともにソニーが投入した新スタイルのモバイルPC「VAIO Duo 11」。開発者が自ら実機を分解し、こだわり抜いた複雑な変形機構の秘密を明らかにする。
ペン入力を生かすアプリも用意
これはソニー非公開の情報だが、タッチパネルとデジタイザスタイラスのベースとなる技術については、イスラエルのN-trig(エヌトリッグ)が提供する静電容量式タッチパネルと筆圧検知に対応するアクティブペンを組み合わせたユーザーインタフェースの「DuoSense」を用いている。
VAIO Duo 11ではこの技術をベースに、前述したハードウェアとソフトウェアの両面で独自の工夫を重ねることにより、指でのマルチタッチとペン入力の操作感をさらに高めているのがポイントだ。
他社製のノートPCではワコムの「Wacom feel IT technologies」により、電池不要で電磁誘導式の筆圧検知対応ペンが利用できる製品もあるが、構造上、タッチとデジタイザのセンサー部分で厚みが出やすい。「ほかの技術では目標とする厚さ18ミリを切るのは困難だった」(鈴木氏)とのことで、VAIO Duo 11のように薄さを追求する場合、デジタイザスタイラスに電池は必要になるが、今回の技術のほうが有利となる。
その一方でVAIO Duo 11は筆圧検知に対応するアプリケーションが限定され、付属のフォトレタッチソフトであるPhotoshop Elements 10や、手書きノートを作成・管理するNote Anytime for VAIOは筆圧検知が利用できない(OneNote 2010、PowerPoint 2010、ペイントアプリのFresh Paintなどでは256段階の筆圧検知が可能)。
これに対し、金森氏は「筆圧検知の対応は広げたいが、ここはソフトウェアベンダーの意向次第。今回はモバイルノートとして、イラスト制作のようなクリエーションの面より、発想を高めるデジタルノートの面に重きを置いた。特にNote Anytime for VAIOは、今まで紙のノートでしてきたことをデジタルならではの価値も含めて提供できるので、購入された方は是非ダウンロードしてご利用いただきたい」とのことだ。
「Note AnytimeはiPad版が先にリリースされたが、VAIO Duo 11用では指でのタッチ操作とペンでの描画の両方を分けて認識できるようになっている。指でスクロールして、ペンで描くといった操作ができるのは他にない強み。筆圧検知は非対応だが、パームチェックはするので、ペン先を近づけたときに画面に置いた手のひらが誤って反応することもない」と、鈴木氏もNote Anytime for VAIOの利便性をアピールする。
以上、今回はVAIO Duo 11の変形機構とディスプレイ、タッチパネルを中心にチェックした。後編では引き続きPC本体部を徹底的に分解し、各部のこだわりに迫る。
・→完全分解×開発秘話(後編):「VAIO Duo 11」を“徹底解剖”して語り尽くす
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