日本のクライアントに信頼感を与えたい──日本法人を設立したSRSの狙い
ソフトウェアによるサウンド補正技術を提供するSRSが日本法人を立ち上げた。一見地味ながら、数多くのPCや小型デバイスに採用されている「大手」ベンダーが日本で目指すものはなにか。
人間の心理も考慮するSRSのサウンド補正技術
SRS Labs(以下、SRS)は、これまでの日本事務所を法人化し、「SRS・ラボズ・ジャパン」(以下、SRSジャパン)を設立したことを発表した。これに合わせて行われた説明会では、米国から来日したSRSのCEOを務めるアラン・クレーマー氏が同社が開発した技術の特徴を紹介した。
クレーマー氏は、SRSが提供する音響技術の特徴が「人間の耳が実際にどんな音を聞くかを考慮したうえで、ソフトウェアによって高音質を再現する」ことにあると述べ、ハードウェアではなく、ソフトウェアで音声を補正することで、明確な音場や設置条件に制約のある小型デバイスに搭載されたスピーカーでも高音質なサウンド再生を可能にしていると説明した。クレーマー氏によると、SRSは“人間の耳が聞く音”を追求するために、人間の耳における聴覚メカニズムを研究する「音響心理学」まで応用して開発を行っているそうだ。
ソフトウェアでサウンド補正を行うSRSの技術は、スピーカーを取り付ける場所に制約が多い小型デバイスで、特にその真価を発揮するとクレーマー氏は主張している。実際、NEC製の携帯電話(N-02A)ではSRSの「SRS TruMedia」を導入して重低音の再生やステレオヘッドフォンによる仮想5.1チャネルサラウンド再生が利用できる。クレーマー氏の説明によると、SRSのサラウンド技術はヘッドフォンで聞くために最適化されており、「SRS Circle Surround」対応のヘッドフォンで聞くと2つのスピーカーだけで5.1チャネルサラウンドが仮想的に再現される。
また、この音場制御の技術を用いて、車搭載オーディオ機器でもSRSの技術が利用されている。この動きは特に日本のメーカーで著しく、10月6日にはパナソニックがSRSの「SRS CS Auto DX」を同社のカーナビゲーション「CN-HX3000D」に採用したことを発表している。車搭載のオーディオ機器では、スピーカーの位置が運転者や同乗者の耳より下になることが多いが、SRS CS Auto DXは、実際のスピーカー位置より音場を上に“持ち上げる”効果によって、人間に耳にはダッシュボードから音が出ているように感じるようになると、クレーマー氏は説明している。
説明会でクレーマー氏は、SRSが開発した技術から、特に「SRS TruVolume」と「SRS TruVoice」をピックアップして紹介した。SRS TruVolmeは米国の家電メーカーから高く評価されている技術だ。米国における調査によると、視聴者の98%が放送局や番組の種類(ドラマ、アニメ、スポーツ実況など)、本編とコマーシャルごとに“激しく”異なる音量の違いを不快に思っている。この問題を解決するために、SRS TruVolumeでは、すべての番組やCMで同じ音量になるように自動で補正する。また、SRS TruVoice(説明会で紹介されたスライドには“SRS TruVoice”とあるが、口頭の説明とSRSの資料では“SRS VIP+”という名称でも紹介されていた)は、主に携帯電話に導入される技術で、通話音声の音質を補正して明瞭にするとともに、周囲のノイズを低減する。
家電、PC、携帯電話、車搭載機器がバランスよく成長する日本市場
SRSジャパン代表取締役の八巻明氏は、日本法人設立の背景を説明した。SRSは、1996年に1人の契約スタッフを日本に配置していたが、日本市場における売り上げが順調に伸びていることと(ただし、2008年は前年実績より低かった)、取引先メーカーから日本市場におけるSRSの方向性を明らかにしてほしいというリクエストがあったことなどから、日本法人の設立を決断したという。
SRSの日本市場における実績は、ワールドワイドと比べていくつかの特徴がある。先に紹介した車搭載機器に対する導入も日本市場で特化した動きだが、SRSが取り組んでいる「家電」「PC」「携帯電話」「車搭載機器」という4つのカテゴリーにおいて、ワールドワイドの実績は家電が7割を占める寡占構造であるが、日本市場の実績は4つのカテゴリーがバランスよく分け合っていることを八巻氏はデータとともに紹介し、厳しい状況にある日本経済においても、SRSジャパンには成長に結びつく好条件が整っているとアピールした。
SRSは、自分達が開発した技術をただ納入するだけでなく、メーカーが開発する製品ごとに音響を最適化できるような“提案”を行うことを特徴としている。この体制をより充実させるために、SRSジャパンでは現在8名体制からさらに増員してクライアントの信頼を得たいと八巻氏は抱負を述べた。
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