電子ペーパーの選択肢が広がる:「SID 2010」リポート(2/2 ページ)
SID 2010では、通常のディスプレイ技術を応用した電子ペーパーも多数発表された。フルカラー化が容易で動画にも対応できるなど、従来とは異なる特徴を備える。
電子ペーパーの種類が広がり目的にあわせた選択が可能に
SIDの展示会場では、シャープが反射型、半透過型の「メモリLCD」を展示していた。これは、各ピクセルにメモリを埋め込むことで電源を切っても画像が残るようにしたLCDで、15マイクロワットと非常に低い消費電力で駆動できるなど、E Inkの電子ペーパーよりも低消費電力が可能という。電子ブックリーダーに最適なデバイスだが、製品化されているのは1.35型および2.7型と小型で、現在は計器などで実用化されている。
しかし、同社は、SID 2010で電子ブックリーダー用途を想定したLEDバックライト搭載の半透過型6型メモリLCDも出展した。バックライトの搭載で暗いところでも書籍が読めるようになる。4.4型も開発中で、2010年の製品化を目指しているという。
2010 International CESで注目を集めたQualcommのMirasoleディスプレイ採用電子ブックリーダーも展示されていた。MirasoleはMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)技術を応用したまったく新しい方式のフルカラー表示デバイスで、動画の再生も可能だ。こちらも2010年に製品化の予定という。
このように、2010年以降は市場で入手可能な電子ペーパーの選択肢が飛躍的に増えそうな兆しがはっきりと見えてきた。デバイスメーカーの目的とコストの要求に応じて、自在に電子ペーパーを選べる時代がそこまで来ていることを、SID 2010に登場した展示品が示しているといえるだろう。
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