Brand New PC Style:GUIの次を探る。それがペン・コンピューティングです。 ー東大GUI研究者の五十嵐健夫氏に聞くーチバ 人間の側がコンピュータのために置き換えをしてあげなければなりませんね。 五十嵐 こうした点をペンなら解消できます。僕の研究成果のひとつとして、線を描く上で自動整形と描画予測を行うプログラム(下記)がすでにありまして、これを使うと、こういう線を描きたい、と線を引くときれいな直線にしてくれたり、高さを揃えたり、つなげたりとか。幾何学的に直角にしてくっつけてくれたりとか、平行にしてくれるとか。こうしたものをただ描いていくだけでできてしまうわけです。ユーザーが手書きで線を描くとまわりの様子を見て、左右対称だとか幅をあわせるだとか、予測的に複数の線を提示したりといったことがペンでできるわけです。 このプログラムは、五十嵐氏の研究成果のひとつである「 自動整形と描画予測による2次元描画システム:Pegasus 」 (1998年)。同氏のサイトにはWeb上で体験できるJavaアプレット版があるので、ぜひさわってみていただきたい。 Pegasus(クリックすると拡大します) 氏の研究成果には、この他に2次元の描画をごく簡単にそのまま3次元モデルに変換してくれるプログラム「 Teddy 」 がある。このプログラムを活用したものとして「マジカルスケッチ」(エクス・ツールス)やPlayStation 2ソフト「ラクガキ王国」(タイトー)が製品化されている。 Teddy(クリックすると拡大します) チバ なるほど。これならイラストレーションの仕事にすぐにでも役立ちそうですね。 五十嵐 ところが、これまではペン・デバイス自体が価格が高かったため、プロやハイアマチュアのユーザーだけのものでした。タブレットPCのようなものが出ることで廉価になれば、一般の人がリアルタイム・コミュニケーションの行うための道具として、使えるようなものになると期待しています。 チバ コミュニケーションツールとしての可能性ですね。もう一点は? 五十嵐 モバイルでの作業に適している、という点です。すでにPDAではペンが多く使われていますが、これは片手で本体をもって、残りの手で操作するのにキーボードでは都合が悪いからです。立ち仕事などで使用する、という点では、タブレットPCには普通のノートPCに比べて優位性がある、と言えます。 チバ ノートPCに置き換わる可能性もありそうですね。最後の3点目はなんでしょう? 五十嵐 「軽い」仕事の処理に適している、ということです。現在のPCでは、文書作成のようにゴールが明確化されていて、心理的にその作業に集中して行うという、いわゆる「重い」作業に適していますが、さっとメモをとったり、考えを整理したりという「軽い」作業には適していません。ペンを使った入力は、会話をしながらや電話しながらなど、マシンそのものに集中しなくても入力できるという意味で「軽い」作業に適しているのです。現在、こうした作業は紙のメモ帳やホワイトボードを使っているわけですが、計算機とつながることで、記録を電子的に残すことができるなど、いろいろと便利になることが多いのです。 チバ 手書き文字がすぐに電子化されるというのは、まさにいまお話のメモをとっている私にとってすぐに欲しいものです(笑) タブレットPCにますます期待してしまいますね。 次回は実際にタブレットPCを使用した五十嵐氏の評価や学生の反応についてお話しいただき、タブレットPCが今後のペン・コンピューティングに与える影響について聞く予定だ。 [チバヒデトシ, ITmedia ] 前のページ | 2/2 | 最初のページ Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. FeaturesPICK UP
|