タブレットPCは近年にない「業界リセット」 ワコム執行役員インタビュー

タブレットPCのペンによるユーザー・インタフェースには、ワコムのタブレットペン技術が大きく関与している。日本企業のテクノロジーが多くのタブレットPCに採用されているのだ。ワコムは、そしてマイクロソフトはどのような経緯でペン・コンピューティングを実現し、どのような将来像を描いているのか、常務執行役員の山田氏と、マーケティング部長の守屋氏に話を聞いた。

ワコム技術採用のメリット

ZD Net 大出  タブレットPCにワコムのペンドライバが搭載されていますが、各メーカーごとにドライバを提供しているのですか?

山田  基本的にはMicrosoft Windows XP Tablet PC Editionに標準機能として当社のドライバが入っています。ただし、イレイサーなどユニークな機能を追加したいというメーカーには、それぞれ当社からドライバを提供しています。

ZD Net 大出  OSに付属する基本ドライバもアップデートされていくのですね。

山田  そうです。始まったばかりですから、当社のペン機能のすべてが提供されているわけではありません。改善点もまだまだありますから、メーカーやユーザーの意見をマイクロソフトさんにフィードバックして、OSのアップデートの際に必要な機能などを集約して提供していくことになります。

ZD Net 大出  これから進化していくという感じでしょうか。

山田  はい。生まれたての赤ちゃんが空を飛べないように(笑)。やっと出発できたところですからね。ただ、出発点としてはレベルが高いという実感があります。これからは業界の動向やニーズをどう反映させて、よりいいものを作っていくのかが重要になりますね。

 マイクロソフトさんもいろいろなメーカーをよく見ています。当社もよく見ていただいていて、特にサポート体制を評価なされたようです。サポートは当社としても自信のあるところですから、それが基準をクリアできていたのかな、と思います。また当社のタブレット技術を採用していただければ、タブレットPCの設計時に液晶パネルとセンサーの組み合わせに苦労することがありませんし、液晶メーカーとも連携しています。設計の自由度が高いため、メーカーはほかの部分の作り込みに専念できます。このようなことも当社が選ばれた理由のひとつだと思っています。

 タブレットPCのような商品は手で持つものですから、「こだわり」が生きてくる製品だと思います。そのためメーカーによっていろいろなパターンの製品が登場しています。

ワコム 常務執行役員 電子機器カンパニー カンパニープレジデント 山田 正彦氏

ZD Net 大出  液晶メーカーとの連携というのは具体的にどのようなことですか?

守屋  弊社のタブレットは、表面からの電磁波をペンで感知することによって、レーダーのように場所などを検出します。しかし液晶ディスプレイはノイズの発生がすごいので、タブレットと組み合わせるのは調整が大変なのです。そこで数年前から液晶メーカーを回っては、ノイズや表面の処理についてタブレットと組み合わせやすいような仕様にしていただけるよう、お願いしてきました。液晶メーカーからご理解をいただいて、問題なくタブレットと組み合わせられるような液晶ディスプレイが増えてきています。

タブレットPCは、さまざまなバリエーションが生まれるだろう

ZD Net 大出  今後さまざまなタイプのタブレットPCが登場する可能性もありますね。

山田  はい。明るさやサイズはもちろん反射型や透過型など、いろいろなバリエーションが可能になります。そうするとメーカー側も用途に特化したタブレットPCを製品化できるといった「業界インフラ」が確立できます。ローパワーで長時間使える製品や、とにかく画面がきれいというような製品をニーズに合わせて供給できるわけですね。それが差別化にもなっていきます。

ZD Net 大出  ユーザーからの意見では今の製品よりも小さいもの、あるいは大きいものへの要望もあるようです。

山田  現在は12インチのタブレットPCが中心になっていますが、次は14インチの製品が多くなるのでは、と思います。また、8、6,4インチといった小さい製品も登場してくるでしょう。PDAよりも一回り大きい、Windows CEマシンの半歩上を行くような製品のニーズも大きいですね。

 タブレットはスケーラブルという特徴もありますから、同じ技術でPDAサイズから18、20インチサイズまで対応できます。ひとつの職場でも部署によって最適なサイズがあります。たとえば医療関係の場合は医者がデスクトップサイズ、看護婦はカルテのサイズ、救急の現場にはPDAサイズが最適といえますが、タブレットはすべてのサイズに対応できるわけです。

守屋  データやハードウェア、ソフトウェアには互換性があって、データは無線LANでやりとりでき、同じペンで入力操作ができる。マーケットの拡大にもつながると考えています。

ZD Net 大出  自分のペンを持ち歩くことで、その場その場のタブレットPCを使用する、などという環境も将来は考えられますね。

[大出裕之, ITmedia ]

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