タブレットPCは近年にない「業界リセット」 ワコム執行役員インタビュー

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山田  そういうことですね。いずれタブレットの機能は、現在のパーツの段階からさらに進んで、液晶ディスプレイの裏面に印刷できるようになるでしょう。そうするとタブレットPCのような端末がいたるところにあって、ペンもどこでも手に入るという環境になっていきます。まさに「紙とペン」のデジタル化ですね。そしてペンにも機能的、デザイン的にいろいろなバリエーションが登場してくるでしょう。

 先日弊社ではA.T.クロスがデザインしたペンを発表しましたが、弊社タブレット技術であれば、電池が不要なため重量バランスがよく、自由なデザインが可能なのです。高級志向から低コストのもの、たくさんのバリエーションから「自分のペン」を持つようになったら楽しいでしょうね。今後は筆記具メーカーさんとも仕事をしていきたいと思っています。

ZD Net 大出  ワコムさんといえばCGというイメージがある反面、ペンを使って楽しめるソフトも出してらしたと思うのですが、そのようなソフトは今後も出していくのですか?

守屋  もちろん、そのつもりです。当社のタブレットは確かにCGが用途の中心でしたが、タブレットPCは普通の人が使うものと考えています。ですからペンを使うことでより楽しめるソフト、より使いやすくなるソフトも提供していきます。

 当社はハードウェア・ベンダーであると同時にソフトウェア・ベンダーでもあるのです。モバイルとペンという新しいカテゴリができて、その第一弾がタブレットPCといえます。まったく新しいプラットフォームですよね。そして今後は情報家電などにも採用されていくでしょう。それに合わせたソリューションを提供していきたいと考えています。

近年にない、業界のリセット状態

山田  このような「業界のリセット状態」というのは、最近まったく無かったのではないかと思います。どこにチャンスが転がっているかわからない。PC業界にとっては非常に大きい「波」なんですよ。業界としては、がんばってより大きな波に育てていかなきゃいけないと思っています。

ZD Net 大出  確か2001年の夏頃に、タブレット技術を応用したデバイスの供給を開始するという発表があったかと思いますが、それがスタートだったのですか?

山田  そうですね。今思えば、あれが契機だったように思います。ただ、マイクロソフトさんとの付き合いは「PenWindows」の頃からですから、古くからありました。当時からマイクロソフトさんのデバイスチームと当社のドライバのチームで交流があって、今回のことは3年前くらいから話はありましたね。

 打ち合わせや情報交換を行ってきて、2001年になって機が熟したというか一気に表面化したように思います。マイクロソフトさんには、ずっと昔からペンの構想があったんですよ。それを、長い時間がかかっても実現してしまうところはすごいと思いますね。

既存のワコム・タブレット対応ソフトの、タブレットPC対応

ZD Net 大出  ソフトへの対応も順次行っていくのでしょうか?

守屋  はい。基本的にはマイクロソフトさんのロードマップに沿っていくことになりますが、たとえばAdobe Photoshopなど既にタブレットが対応していたアプリケーションについては順次タブレットPC対応はされていくと思います。

 むしろAcrobatや今までなかったソフトに対応する方がインパクトはあります。Acrobatはe-Japan構想で電子申請書類などに使用する計画があって、その入力作業にタブレットを使ってはどうかという話があります。これが実現すれば、大きなブレイクスルーになると思います。

山田  また、タブレットPC向けのサイン認証ソフトとして「Penflow」を発売しています。このエンジンはインターネットバンキングなどにも採用されています。さらに、シャチハタさんと電子印鑑の開発も行っています。ハンコ用のタブレットですね。普通の印鑑と同じように押せばいいのですが、IDで管理することによってセキュリティを持たせています。もちろん普通のハンコとしても使えます。これとペンによる認証を組み合わせれば、強固なセキュリティを確立できます。ネームペンの電子版といったところでしょうか。

巻き物タブレットPCも登場するだろう

ZD Net 大出  ペン・コンピューティングがタブレットPCという形で第一歩を踏み出したわけですが、将来はどのようになると思われますか?

山田  将来はPCとしての機能がワンチップになり、5mmくらいの厚さに収まってしまうでしょう。かといって小さすぎても使いづらいし、目で見る部分や手で触る部分も必要です。タブレットの部分は液晶ディスプレイの裏側に印刷されるようになりますし、液晶ディスプレイもより薄く、やわらかくなっていきますから、巻物のようなスタイルとか、いろいろなスタイルが出てくると思います。

山田氏が手に持っているのは、パーツ状態の液晶タブレット。これがPCに組み込まれると、タブレットPCになる

[大出裕之, ITmedia ]

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