Brand New PC Style:タブレットPCはオフィスをどう変える?ーコクヨ 森川卓也氏に聞くー

タブレットPCによって、ビジネスにおけるワーク・スタイルにも新しい息吹が吹き込まれることだろう。ワーク・スタイルのあり方を常に探求してきている企業がコクヨだ。そのコクヨの事業として注目されているレンタルオフィススペース「DESK@(デスカット)」を展開するE-KOKUYO開発室室長の森川卓也氏に、タブレットPCがオフィスや仕事のあり方に与える影響についてお話をうかがった。

タブレットPCなら“紙にできないことができる”!?

 パソコンは、新しい文具として、ひいては表現やコミュニケーションのツールとして、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えたのは異論のないところだろう。しかし、そうした中でも多くのPCユーザーがノートと鉛筆が手放せないのは現前たる事実と言える。これは“手書き”というものが長年、人類のコミュニケーション手段の要であり続けてきたことからだろう。

 その“手書き”を入力方法に取り入れたタブレットPCは、PCのあり方はもちろん、ビジネスの進め方、さらにはコミュニケーションのあり方すらをも変えてしまおうとしている。

 創業明治38年のコクヨは、歴史ある文具メーカーとして、またオフィス家具をはじめとするオフィス製品のトップブランドとして知られている。そのオフィスと仕事というものをもっともよく知る企業として、パソコンやインターネットの普及により大きく様変わりしつつあるオフィスやワーク・スタイルに対して、さまざまな新しい提案を打ち出している。

 そのひとつのプロジェクトとして注目されているのが、オフィスレンタルスペースの「 DESK@(デスカット) 」 だ。ノートPCの普及で自由に移動しつつオフィス機能を持つことができるようになった現代において、新たなモバイルワークスペースを提供するのがこのDESK@というわけだ。

 今回はそのDESK@を運営するE-KOKUYO開発室の室長、森川卓也氏に実際にタブレットPCに触れていただき、その感想とタブレットPCが与える影響について語っていただいた。

チバ  まず実際にタブレットPCをさわってみた感想をお聞かせいただけますか?

森川  ハードについては、見た目より軽いという感じですね。スタイラス・ペンについては、ペンをひっくり返して後ろを押しながらこすると消しゴムとして使える(機種もある)のには驚きました。アナログの感覚をうまく取り入れていますね。

チバ  Windows Journalについてはどのような感想を持たれましたか?

森川  まず、手書き認識についてですが、書いてる後から変換されてくるようになるといいなぁ、と思いましたね。それかページまるごと変換してくれるとか。あとは消すアクションとか、閉じるアクションといった機能があるといいなと思いました。

チバ  御社のmimio *1 の変換は1ページに書いてある文章をまるごと変換することができますね。

森川  はい。確かにデモを見る限りではとてもスムーズに変換していますが、あれはあれで離して書くとか、いろいろとコツがあるんですよ(笑)

チバ  なるほど。コクヨさんと言えば、「書簡箋」や「キャンパス」ノートをはじめとする手書きの文化を支えてきた企業ですよね。そうした紙文化の象徴とも言える企業の方から見た紙とタブレットの違いをどのように感じていますか?

森川  そうですね。タブレットPCに出来ることは紙と大きくはかわらない、という印象を持つとともに“紙にしかできないこと”を再認識しました。そう思う反面、“紙にできないことができる”という発見もありました。

 まず、“紙にしかできないこと”ですが、紙はその場で必要な部分を破ってその場で渡したりできますよね。それから一覧性については圧倒的に手帳の方が上だと思います。どうしたらデジタルがこれを越えられるかは、大きなポイントになるのではないでしょうか? 

 次に“紙にできないことができる”という点ですが、例えば、Windows Journalで手書きで書いた文字と文字の間に自由に空間を作ることができるのはおもしろいですね。紙に書き加える場合は、空いているスペースに書いて、無理矢理、矢印を引いたりしますよね。それから、原稿用紙の罫の太さなどを変えられるのがよいですね。紙の場合は、一度、買ってしまったら使い切るまで変えらません。当たり前のことですが。

チバ  ぜひ、「書簡箋」のテンプレートをWindows Journal用に提供していただきたいですね。それでは、逆に違和感を覚えたとか、ここが欠点ではないか、ということはありますか?

森川  書いているメモをメモ単位でどこかに放り込むことができるようになるといいですね。いまのところは1ページ毎に保存しなければなりませんよね。それと私はいつも、メモを書いて、どこに書いたか忘れてしまうんです。その書いた場所を覚えておく機能があるといいですね。それから入力や認識でちょっと間があいたり、反応が自分の意図と違っていたりすることがあるのは乗り超えて欲しい壁ですね。

(Windows XP Tablet PC Editionには、「 付箋 」 というソフトが付属する。他のアプリケーションに内容を貼り付ける際には画像データとなる。“付箋”専用のファイル形式であるため、他のPCとのやりとりもスムーズではない)


*1 KOKUYO mimio :ホワイトボードに書いた内容を取り込んだり、プロジェクターで投影したPCの画面をその場で操作することができるデジタル会議を実現するツール。

[チバヒデトシ, ITmedia ]

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