ネットワーク関連で世界最大、Ericssonの南京工場を訪問:Ericsson Business Innovation Forum 2010
Ericssonは中国に工場を持ち、世界中へネットワーク関連の製品を輸出している。同社はどのように製品を製造・品質管理しているのだろうか。Ericsson Business Innovation Forum 2010の最終日に、南京にある同社の工場を訪問した。
上海から車で4時間の南京市、ここにEricssonの工場「Nanjing Ericsson Panda Communications(ENC)」が設立されている。ENCはEricssonと中国の通信ベンダー、Nanjing Panda(南京熊猫)、Potevio(普天)など4社による合弁企業であり、Ericssonの中国における最初のジョイントベンチャーとして1992年に設立された。
江蘇省の省都、南京市の面積は6598平方キロメートルで、人口は741万人。ENCはここに敷地面積7万平方メートルの土地を有しており、建物の床面積は4万平方メートル。社員数は2010年5月19日の訪問時で2770人で、このうちサプライ関連が2309人、研究開発には461人が従事している。ENCの昨年の純売上げは約170億人民元。
従業員構成は、20代が48%、30代が40.2%、40代が11.1%、50代以上が0.7%で、平均年齢は31.5歳。また大学卒以上が全体の68.1%を占め、若くて高学歴な従業員が多い。Ericssonが上海や広東省ではなく南京にENCを構えたのも、工場建設に必要な土地が用意されていたことに加え、大学があり優秀な人材を確保しやすかったという背景がある。
ENCの主な生産品は、基地局設備(GSM、GPRS、W-CDMA/TD-SCDMA)やマルチサービスネットワークシステム(IP Broadband、Network Management)など。設立当時は中国国内向け製品の製造が100%だったが、現在は国内向けが約65%、海外への輸出が約35%であり、輸出の割合が高まっている。このENCは基地局設備の工場としては業界最大となる。
ENCでは従業員の意識向上や生産効率向上のために数々の取り組みを行っており、いくつかは日本の製造業が長年にわたって構築してきたシステムを採用している。例えば、従業員を少人数に分けてのグループ改善活動では、活動結果を示すピンポン玉で積み上げ、棒グラフ状に表示したボードを通路に設置し、各グループの結果が一目で分かるようにしている。生産現場にはいわゆる「カンバン方式」を取り入れ、必要なものを必要なときに、必要なだけ生産することを目指している。これは日本の製造工場で広く行われているものであり、ENCの生産現場を日本の思想が支えているとも言えるだろう。
このほか、ENCで実際に製造している基地局のサンプルや、その生産ラインを見学。ENCで生産される製品は通信事業者向けのカスタム製品が多く、生産ラインの最後にはテストブースが設置され、全生産品は1つ1つ動作チェックを行ってから出荷されている。
「ENCの目標は『The No.1 preferred Ericsson supplier』となることであり、そのために優秀な人材確保や人材の育成、また生産効率の向上を常に考えている。中国とスウェーデン両国の良い所を合わせることで、ENCの競争力を高めていきたい」――ENCの社長兼トップのホーカン・サンドクゥイスト氏は同社の今後の豊富を語った。
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