東京ガスはエネファームやスマートハウスだけでなく、太陽熱を冷房に利用する「ソーラークーリングシステム」をアピールしていた。その仕組みと実証実験における効果について説明を聞くことができた。
スマートグリッド展2012の東京ガスのブースでは、エネファームやスマートハウスの模型に混じって、太陽熱を冷房に利用する「ソーラークーリングシステム」の説明パネルを展示していた(図1)。
ソーラークーリングシステムの基本的な仕組みを簡単に説明すると、太陽熱を利用して水を蒸発させ、その際に周囲の気化熱が失われる現象を利用するシステム。気化熱が失われて、温度が下がる部分で冷却水を冷やし、冷房に活用する。
ソーラークーリングシステムでは、太陽熱を集めるために、ビルの屋上に「真空管式太陽熱集熱器」を設置する。ここで集めた熱を「ソーラーナチュラルチラー」という機器に送る。この内部で、先に説明した仕組みを利用して冷却水を冷やす。
同社や大阪ガスといったガス会社は、ガスを燃焼させることによって得られる熱を利用した「ナチュラルチラー」という機器を提供している。この機器だけを利用すると、冷房時のエネルギー効率を表す値であるCOP(Coefficient Of Performance)は1.1程度になるという。COP値は高いほど効率が良いことを示す。
東京ガスは、同社の中原ビル(神奈川県川崎市)を利用して、ナチュラルチラーと、ソーラークーリングシステムを組み合わせた実証実験を続けているという(図2)。現在のところ、ソーラークーリングシステムを組み合わせることで、COP値を1.5まで上げることができているという。ガスの消費量を24%削減できる計算になる。
さらに、このシステムは太陽熱が集まるほど冷却水の冷却が進む。つまり夏の昼間に暑くなるほど効率が上がる。夏にピークカットに向くシステムだといえる。中原ビルでの実験でも、太陽熱だけで冷房を運転できる時間があるという。
電気を利用する一般的な空調機器に比べると、まだ効率が高いとは言えないそうだが、電力を消費せず、暑くなるほど冷房の効率が高まるというこのシステムには期待したい。
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