岡山県は全国で最も雨が降らない「晴れの国」として知られ、県内各地でメガソーラーが急増中だ。瀬戸内海に面した広大な塩田の跡地に世界でも最大級の250MWの建設プロジェクトが進んでいるほか、植物工場や浄水場、岡山空港にも太陽光発電のネットワークが広がっていく。
岡山県のホームページを見ると、県の統計データが101種類も掲載されている。その中に日本一を誇るものが2つあって、うち1つが「降水量1mm未満の日数」である。1年で4分の3にあたる276日は雨がほとんど降らない(図1)。まさに温暖な瀬戸内海の気候を象徴するデータで、県を挙げて太陽光発電に取り組むのは当然だろう。
ただし最近まで、岡山県の再生可能エネルギーの導入量は太陽光発電を含めて決して多くなかった(図2)。本腰を入れ始めたのは2011年からで、太陽光発電を中心に新しい施策を矢継ぎ早に打ち出している。
代表的なものが「晴れの国おかやまメガソーラー設置促進補助金」である。発電能力が1MW(メガワット)以上の太陽光発電プロジェクトに対して、最高1億円を県が補助するもので、2013年3月末までの認定設備が対象になる。
これと合わせて県や市町村の所有する未利用の土地をメガソーラー事業者に売却・貸付することにも着手している。募集開始から半年間に5件のプロジェクトが確定した。岡山県の計画では2020年までにメガソーラーを25か所に拡大することが目標だ。
市町村みずからが大規模な開発プロジェクトに乗り出す動きも始まった。瀬戸内市が2014年の稼働を目指して進めている計画では、発電能力が250MWに達する世界でも最大級のメガソーラーを建設する。現時点で国内最大の扇島太陽光発電所(13MW)の20倍の規模になる。
この土地は古くは東洋一の塩田だった「錦海塩田跡地」(図3)で、面積は東京ディズニーランドの10倍に相当する500ヘクタールの広さがある。製塩業が行き詰った後は産業廃棄物の最終処分場として使われていたが、その事業も2008年に終了。周辺地域の環境を維持する必要があり、市が土地を取得してメガソーラーによる再開発を決定した。
壮大なプロジェクトを推進するのは、日本IBMやNTT西日本を含む7社の企業連合体である。瀬戸内海に面した人口4万人弱の小さな都市に、7万5000世帯分の電力を供給できる大規模なメガソーラーが2年以内に完成する予定だ。
単に巨大なメガソーラーを建設するだけにとどまらず、太陽光発電システムの展示場などを加えて一大エネルギーパークに発展させる構想もある。総事業費は650億円以上を見込んでいる。日本のエネルギーの将来像を示すモデル地域になることを目指す。
先進的な取り組みは岡山市内でも始まっている。太陽光発電を生かした新しいスタイルの農業を「京山ソーラー・グリーン・パーク」で見ることができる(図4)。パーク内にある植物工場では照明や空調などに必要な電力を太陽光で供給できるようになっている。
ここで使われる太陽光発電システムは集光型と呼ばれるもので、レンズや鏡を利用して太陽光を500倍の強さにして発電する。小さな太陽光パネルでも効率よく電力を作り出せるため、次世代の太陽光発電システムとして注目を集める。
一方で岡山県による導入プロジェクトも拡大中だ。特に規模が大きいのは浄水場の発電設備で、水を貯めておく池の上を太陽光パネルで全面的にカバーする(図5)。
中でも最大の「西之浦浄水場」に設置した太陽光発電システムはメガソーラー級の0.8MWの能力がある。発電した電力は浄水場のポンプなどの電源として使い、余った分は中国電力に売却している。
目新しいところでは、県営の岡山空港にメガソーラーを導入する計画がある。ちょうど滑走路の南側に沿って長い斜面があり、そこに1万5000枚の太陽光パネルを敷き詰める(図6)。これで発電能力は3.5MWになる。
使われていない広大な土地があれば、どんどん太陽光発電システムを導入して、自然の恵みをエネルギーに変えていく。「晴れの国」が「太陽エネルギーの国」になる日も遠くなさそうだ。
2014年版(33)岡山:「酪農の街に木質バイオマス、塩田やゴルフ場には巨大メガソーラー 」
2013年版(33)岡山:「全国平均よりも16%多い発電量、太陽光を5年間で3倍に増やす」
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