離島に広がる風力発電、送配電の問題を大型蓄電池で解消電力供給サービス

太陽光発電に続いて風力発電が全国各地に広がり始めた。ところが問題は風速の変化によって発電量が激しく変動して、企業や家庭に電力を送るための送配電システムを不安定にしてしまうことだ。九州電力は長崎県の壱岐で、大型の蓄電池を使って電力の変動を抑制する実証実験を開始した。

» 2013年03月25日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 離島の電力は基本的に島の中で自給自足しなくてはならない。たいていの島には小規模な発電所があって、ほとんどが火力だが、最近は太陽光や風力も増えてきた。特に風力発電は風の強い場所に適していることから、数多くの島で建設が進んでいる。

 ただし風力発電は風速の変動によって発電量が激しく変動するために、電力を送り出す送配電ネットワークを不安定にしてしまう問題がある。解決策のひとつは、風力発電所と送配電ネットワークをつなぐ変電所に蓄電池を設置して、電力の変動分を吸収できるようにする方法だ。

 九州電力は日本海に浮かぶ長崎県の壱岐を対象に選び、大型の蓄電池による風力発電の連系拡大に向けた実証実験を開始した。壱岐にはディーゼルエンジンを使った内燃力発電所が2か所あるほか、出力1500kWの「壱岐芦辺風力発電所」が稼働している。

 この3つの発電所から送られてくる電力を、変電所に設置した蓄電池を使って最適な状態に制御する(図1)。風力発電所の近くにある「芦辺変電所」に、4000kWまでの電力に対応可能な大型のリチウムイオン蓄電池を設置した。蓄電できる容量は800kWhある。

図1 壱岐の電力ネットワーク。出典:九州電力

 一般に風力発電の出力は風速によって激しく変動する。そのまま送配電ネットワークに電力を送り出してしまうと、周波数が変動してトラブルの原因になりかねない。風力発電の出力変動に合わせて電力を蓄電池に充電、あるいは逆に放電することによって、送配電ネットワークに送り出す電力の変化を抑制することができる(図2)。

図2 風力発電の出力変動を蓄電池で制御。出典:九州電力

 壱岐の実証実験では、変動を抑制する最適な制御方法を検証するほか、必要な蓄電池の容量などを確認する。実験期間は2015年3月までを予定している。

 同様の蓄電池を使った実証実験は沖縄電力が宮古島にある太陽光発電所で実施中だ。それぞれの実験結果をもとに、離島における太陽光発電と風力発電の設備を拡大して、既存の火力発電と組み合わせた電力供給体制を構築していく。

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