初期費用0円の家庭用蓄電池、月額2900円から蓄電・発電機器(1/2 ページ)

蓄電池や太陽光発電を導入するメリットは大きい。しかし、初期費用が数百万円にも上る。このハードルは高い。オリックスとNEC、エプコは、蓄電池にレンタルサービスを採り入れることで、スマートフォンなみの月額料金を実現した。太陽光発電システムの屋根貸し契約と組み合わせることで、実質0円にすることも可能だという。

» 2013年05月02日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 家庭用蓄電システムは魅力的だ。大容量品を導入すれば、停電時でも家電を10時間程度利用可能だ。工夫次第で毎月の電気料金の節約もかなう。料金の安い時間帯に充電すればよい。太陽光発電システムと組み合わせて効率良く電気を使うこともできる。ユーザーの要望に応じてさまざまなメリットを享受できるということだ。

 だが、リチウムイオン蓄電池は本体の価格が高い。容量1kWh当たり30〜40万の初期導入費用が必要だ。住宅新築時に設置する場合を除き、ハードルが高い。

 このような状況を覆すサービスをオリックスとNEC、エプコが開発、2013年6月から開始する。3社が出資したONEエネルギーが全国向けにサービスを提供する*1)

*1) オリックスは事業モデルの構築と営業、金融を担当し、NECはリチウムイオン蓄電池本体と蓄電池からの運転情報を収集するクラウドシステムを担う。エプコは設計と工事監理を担当し、ユーザー向けの節電アプリケーションを提供する。

 サービスの基本的な内容は、ONEエネルギーが家庭用の定置型リチウムイオン蓄電池(容量5.53kWh、図1)を10年契約でレンタルし、月額4900円(税別、東京都のみ2900円*2))をユーザーが支払うというもの。ユーザーは蓄電池システムの初期導入費用を負担する必要がなく、即座に蓄電池のメリットが得られる。業務用のOA機器などではごく当たり前のように普及しているレンタルサービスだが、家庭用の大容量蓄電池に適用した例はほとんどなかった。

 「4900円のレンタルサービスを10年間継続した時点で、約62万円の支払いとなるが、これは当社と同程度の容量の蓄電池を直接購入した場合の半額以下だ」(ONEエネルギー)。

*2) 東京都は今回のサービスに適用可能な補助金を定めているため、国の補助金のみが適用される他地域よりも安価でサービスを提供可能だとした。今後は地方自治体の補助金制定について調査し、順次、地域ごとの料金プランを発表するという。

図1 ONEエネルギーのサービスで利用する蓄電システム 出典:NEC

蓄電池のレンタルだけではない

 今回のサービスにはレンタルを採り入れたことの他に、複数の特徴がある。太陽光発電システムと組み合わせて月額料金を埋め合わせるものや、蓄電池の性能保証、スマートハウス化の支援、エンドユーザー向けのアプリケーションソフトウェアの提供だ。

 今回のサービスの2番目の目玉は太陽光発電システムとの組み合わせだろう。多くのサービスでは太陽光も蓄電池も導入時にユーザーが初期費用を負担する必要がある。ONEエネルギーのサービスは違う。

 一戸建て住宅の屋根スペースをONEエネルギーに20年契約で貸し出すと、同社が太陽光発電システムを導入する。システムの所有権はONEエネルギーにあり、ONEエネルギーが売電収入を得る。その代わり、ユーザーは屋根スペースの賃料を受け取る*3)

*3) 停電時は売電できないため、蓄電池と併せて太陽光発電システムを非常用電源として利用できる。なお、契約が完了した20年目以降は太陽電池モジュールをユーザーに譲渡する契約だ。

 例えば、南に向いた屋根に出力4kWの太陽電池モジュールをONEエネルギーが設置できた場合、ユーザーの賃料収入は月額2500円を見込む。都内のユーザーであれば、蓄電池システムの月額費用が差し引き500円程度でまかなえる計算だ。「蓄電池の節電効果が月2500〜3000円程度だとすると、4900円のレンタル料金よりも、節電と賃料収入の合計の方が大きくなる」(ONEエネルギー)。サービス開始前にモニター実験をした結果によると、一日の電気代の節約効果は従量料金だけでも119円であり、月の節電効果の見積もりがほぼ正しいことが分かる(図2)。

図2 蓄電池の有無による電気料金の差。出典:ONEエネルギー

 蓄電池には寿命がある。充電と放電を繰り返すと、次第に最大容量が減っていく現象だ。通常は蓄電池の容量が初期の70%に低減するまでの時間を寿命とする。

 ここまでは想定内だ。しかし、ユーザーが蓄電池を導入後に最大容量が減ったとき、それが本来の仕様の範囲内にあるのか、何らかの異常が生じたのかが分からない。ONEエネルギーのサービスでは、蓄電池システムはNECのデータセンターに低速で常時接続しており、システム内の温度や充放電の状況などを常時監視できる。異常が起きたのか、本来の寿命に沿った容量低減なのかが、判定できるということだ。

 そこで、各時点において、その時点の最大容量の半分程度しか容量が残ってない場合を異常として、モジュールの交換を行う性能保証を付けた。蓄電池の性能保証を行うこと自体が、家庭用として数少ないサービスとなる。

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