洋上風力の実用化へ、国内2基目の大型風車が北九州沖で運転開始自然エネルギー

国内で最大規模の大型風車が福岡県の北九州沖で6月27日に運転を開始した。陸地から離れた海域の洋上風力発電設備としては、3月に稼働した千葉県の銚子沖に次ぐ2基目になる。基礎部分を海底に固定する「着床式」で、海底が平坦でなくても設置できるハイブリッド構造を初めて採用した。

» 2013年06月28日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 日本の近海で洋上風力発電プロジェクトが続々と始まっている。その中で陸地から1キロメートル以上の沖合で稼働している設備は現時点で3カ所にある。基礎部分を海底に固定する「着床式」は銚子沖と北九州沖に、発電設備を海面に浮かせる「浮体式」は長崎県の五島沖に設置されている。このうち着床式の2カ所が実証運転の段階に入った。

 6月27日に運転を開始した北九州沖のプロジェクトはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とJ-POWER(電源開発)が共同で進めているもので、沖合1.4キロメートルの海域に発電設備を設置した(図1)。近くには風速などを観測するタワーも稼働中だ。

図1 北九州沖の洋上風力発電設備。出典:NEDO、J-POWER

 風車は直径83.3メートルの大きさで、最大2MW(メガワット)の発電能力がある(図2)。国内で稼働している商用の風力発電機では最も大きいクラスに入る。発電機を内蔵した中心部(ナセル)は海面から80メートルの位置にあり、風車の最高到達点は126メートルの高さになる。3月から稼働中の銚子沖の発電設備も同様の規模である。

図2 洋上風車の全体イメージと仕様。出典:NEDO、J-POWER
図3 着床式の設置方法。出典:国土交通省

 2カ所の発電設備で違う点は基礎部分の構造にある。海底に固定する着床式の設置方法は3種類に分かれる(図3)。銚子沖では海底の地盤が平坦な場合に適している「重力式」を採用したが、北九州沖では傾斜がある地盤でも対応できる「ジャケット式」を組み合わせたハイブリッド構造にした。それだけ適用範囲が広く、実用化の段階では有効な設置方法と言える。

 NEDOとJ-POWERは2015年3月まで北九州沖で実証実験を続けて、風車の信頼性のほか、陸上への送電状況や洋上のメンテナンス技術などを検証することにしている。その結果をもとに2015年度には実用化に向けた次のフェーズへ移行する見通しだ。銚子沖や五島沖、さらに福島沖でも浮体式の洋上風力発電設備が2013年度中に運転を開始する予定で、各プロジェクトの成果に大きな期待がかかる。

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