東京電力は福島県の「広野火力発電所」で最新鋭の石炭火力発電設備の営業運転を開始した。石炭火力では最高水準になる45%の発電効率を発揮して、60万kWの電力を供給することができる。コストの安い石炭火力発電を増強することによって、経営を圧迫している燃料費の削減を図る狙いだ。
「広野火力発電所」は東京電力の主力電源のひとつで、1〜6号機を合わせると発電能力は440万kWに達する。東京電力の供給力の1割近くを担っている。このうち1〜4号機は石油火力、5号機と6号機が石炭火力だ(図1)。東京電力には現時点で石炭火力発電設備は3基しかなく、そのうちの2基が広野で稼働中である。
最新の6号機は2013年4月12日に試運転を開始して、12月3日から営業運転に入った(図2)。現在の石炭火力では最高水準になる45.2%の発電効率を発揮する。「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」と呼ぶ高温・高圧の蒸気を発生させる技術を使って高い発電効率を実現した。
従来方式の石炭火力では発電効率が36%程度、最新型でも41%程度で、それらを大幅に上回る(図3)。効率が良いとされるガス火力でも、従来の設備では40%前後にとどまる。この発電効率の差はそのままCO2の排出量削減につながり、石炭火力が抱える最大の問題点を緩和することができる。
福島第一原子力発電所の事故以来、火力発電の比率が急増した結果、東京電力をはじめ電力各社は燃料費の増加で収益が悪化している。東京電力の火力発電設備の中にも燃料費の高い石油を使った設備が数多く残っていて、ガスか石炭への転換が急がれる状況だ。原子力発電所の再稼働に時間とコストをかけるよりも確実な対策になる。
東京電力は茨城県の「常陸那珂発電所」でも高効率の石炭火力を実施していて、新たに中部電力と合弁で設備を増強する計画を発表した。このほかにも東北電力と共同で運営する「勿来発電所」では、次世代の石炭火力発電設備の商用運転を2013年4月に開始している。
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