南洋に浮かぶトンガ、マイクログリッドで電力の1/8を調整自然エネルギー(1/2 ページ)

トンガは再生可能エネルギーの導入に熱心だ。2020年までに電力需要の50%をまかなう計画を打ち出している。2014年には富士電機が1MWの太陽光発電システムを納入する。トンガのような島国に向くマイクログリッドと組み合わせることが特徴だ。

» 2013年12月26日 19時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 南太平洋の島国トンガ王国(図1)。トンガと日本には共通点が幾つかある。島国であること、大規模な海溝に隣接しており、地震国であること、これらは地理上の共通点だ。エネルギー面では化石燃料への依存率が極端に高いことが共通している。

 「化石燃料への依存度が9割を突破、節電は効いているのだが」で紹介したように、日本のエネルギーは化石燃料に9割以上依存している。石油をはじめとする化石燃料の価格は中長期的には上昇傾向にあり、既に日本の貿易赤字の原因の1つにもなっている。

 全く同じことがトンガにも当てはまる。トンガの発電所は98%以上が火力だからだ。化石燃料の比率を下げなければならない。火山*1)とサンゴ礁からなるトンガは海面上昇を防ぐための二酸化炭素(CO2)排出量削減にも真剣だ。

 2つの目的を実現するため、トンガ政府は2020年までに電力供給の50%を再生可能エネルギーに置き換える「Tonga Energy Road Map 2010(TERM)」を打ち出している。ただし、トンガが選択できる利用可能な再生可能エネルギー源は多くはない。そこで、太陽光から導入を開始する。

 図1にトンガの位置を示した。赤い長円で囲まれた領域がトンガの主な領土である。すぐ西にフィージーがあり、北にはサモアが隣接する。図の左上には中国大陸、台湾、沖縄が、右上にはハワイが描かれている。

*1) トンガには富士山のようなきれいな三角形をした成層火山からなるKao島がある。標高は1030m。

図1 トンガの位置

外務省が無償資金協力を打ち出す

 外務省は2013年3月、トンガに対する無償資金協力「マイクログリッドシステム導入計画」に関する書簡をトンガ首相と交換。15億7300万円の無償資金援助を約束した。これは総事業費16億3000万円の計画であり、日本側が太陽光発電システムとマイクログリッドシステム一括導入し、トンガ側が用地の収用と造成を担う。

 外務省によれば、マイクログリッドシステム導入計画により、発電用ディーゼル燃料を年間327kL(約2800万円)減らすことに加えて、二酸化炭素の年間排出量を886トン削減できるという。

 これを受けて、国際協力機構(JICA)は、トンガ電力公社との間で交換公文に署名した。出力1MWの太陽光発電システムと組み合わせた形でマイクログリッドシステムを導入する。JICAによれば、導入計画の協力期間は2013年3月から2015年3月。導入先のトンガタプ島の電力供給は約8MWであるという。太陽光発電システムの、年間発電量は1308MWh(130万8000kWh)を目標としている*2)

*2) JICAによれば、ニュージーランド政府による太陽光発電システム(出力1.32MW)が2012年8月からトンガタプ島で運用されている。

 2013年12月には富士電機と南洋貿易がトンガ電力公社から新規マイクログリッドシステムを受注したことを発表した。「主契約者は南洋貿易であり、富士電機とのコンソーシアムとのリーダーを務める。当社はマイクログリッドシステムをフルターンキー*3)で納入する」(富士電機)。

*3) フルターンキー納入とは、設計・調達・建設(EPC)と試運転を単一の企業が一括して契約する方式。契約金額は定額であり、納期や性能保証の責任を負う。プラントのキーを回すだけで運転できる様子を指して「ターンキー」と呼ぶ。

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