電力会社を解体、「発送電分離」なしに改革は終わらず電力自由化の3つのステップ(3)(1/2 ページ)

電力を利用者に届けるためには、発電と送配電の巨大な設備が不可欠だ。電力会社が運用する送配電ネットワークを発電設備から独立させて、すべての事業者が利用できるようにする。改革の第3段階で「発送電分離」を実施してこそ、発電事業者と小売事業者が公平に競争できる市場が生まれる。

» 2014年05月02日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第1回:「電力会社の地域独占を崩す、広域機関の準備が48社で始動」

第2回:「電気料金の価格競争を全国に、小売全面自由化で事業者が急増」

 日本全国に張りめぐらされた電線を通じて、電力は延々と運ばれて利用者のもとに届けられる。水力発電所の電力も火力発電所の電力も、同じように変電所を経由して工場や家庭まで送られる仕組みだ(図1)。電力システムのかなめは送配電ネットワークであり、それを運用しているのは電力会社である。

図1 日本の電力市場の構造。出典:資源エネルギー庁

 電力会社以外の発電事業者や小売事業者も、この送配電ネットワークを使わなければ顧客に電力を供給することができない。現在でも制度上は利用できるようになっているが、実際には制約が多く、オープンなネットワークとは言いがたい。小売全面自由化によって、発電事業者は電力会社以外にも電力を供給しやすい市場ができるため、送配電ネットワークの開放は競争促進の点で極めて重要だ(図2)。

図2 小売全面自由化による発電事業者と小売事業者の位置づけ。出典:電力システム改革専門委員会

 送配電ネットワークを電力会社から独立させる「発送電分離」が、改革を締めくくる第3段階の施策である。電力会社の組織を発電・送配電・小売の3つの事業会社に分割して、相互の取引を他の事業者と対等な形で実行する体制へ変更する(図3)。

図3 電力会社の発送電分離の形態。出典:電力システム改革専門委員会

 これまでに発送電分離を実施した海外の主要国では、何通りかの分割方式がとられている。日本ではフランスなどが取り入れた「法的分離」を採用する案が有力だ。この方式では持株会社を通じて資本関係が残るため、完全な独立体制にはならないものの、事業会社のあいだの取引関係は透明性を高めることができる。

 すでに東京電力は法的分離による発送電分離を想定して、2013年4月からカンパニー制に移行している。持株会社に相当する本社機構の「コーポレート」の下に、火力発電・送配電・小売を担当する3つのカンパニーを設置して事業を分割した(図4)。さらに小売全面自由化が始まる2016年度には、3つの事業会社に独立させる方針だ。

図4 発送電分離に先行して実施する東京電力の組織改革。出典:東京電力
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