水素エネルギーで世界をリードする国家戦略、化石燃料に依存しない社会へスマートシティ(1/3 ページ)

将来に向けた日本のエネルギー戦略の中で重要な役割を担う水素・燃料電池のロードマップがまとまった。定置用燃料電池、燃料電池車、水素発電の3つの分野を対象に、2050年までの目標と重点施策を掲げる。国の総力を挙げて、化石燃料にも原子力にも依存しない水素社会の実現を目指す。

» 2014年06月26日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 資源エネルギー庁が水素・燃料電池の市場拡大に向けたロードマップを策定した。水素はCO2も放射能も排出しないクリーンなエネルギーとして世界の注目を集めている。しかも水素を利用して発電する燃料電池の分野では、日本の特許出願数は世界でも2位の国を5倍以上も引き離して圧倒的に優位な状況にある。

 6月24日に公表した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、2050年までに国全体へ水素供給システムを普及させるための目標と重点施策を3つのフェーズに分けてまとめた(図1)。

図1 「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の全体計画(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 第1フェーズの重要なマイルストーンは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで日本の技術をアピールすることだ。家庭用に加えて業務・産業用の燃料電池を分散型の電源として2017年から普及させる一方、大都市圏を中心に燃料電池を搭載した乗用車とバスを拡大していく。

 続く第2フェーズでは水素発電に本格的に取り組む。2020年を目標に発電技術の開発・実証を進めて、2020年代には自家用の小規模な発電設備、さらに2030年代には事業用の大規模な発電設備を導入できるように、水素の供給システムを含めて環境を整備する。

 さらに第3フェーズで水素の製造・輸送・貯蔵までの一貫体制を国全体に展開していく。今後の火力発電設備などに導入される予定のCCS(Carbon dioxide Capture and Storage:CO2回収・貯留)や再生可能エネルギーと組み合わせて、「CO2フリー」の水素供給システムを2040年までに完成させる構想だ。

 水素の用途別にロードマップを見ると、先行するのは定置用燃料電池と燃料電池車である(図2)。すでに家庭用の燃料電池は「エネファーム」で市場が拡大中だが、導入コストを下げながら2020年には現在の20倍に相当する140万台に増やす。一方で企業が利用する業務・産業用の燃料電池は低コスト化と合わせて規制を見直すことで、2017年から大量導入を図る。

図2 用途別のロードマップ(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
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