停電時に太陽光が6kW使える、電気自動車にも充電できる蓄電・発電機器(1/2 ページ)

三菱電機が世界初をうたう戸建住宅用の電力変換装置「SMART V2H」を発表した。商用電力と太陽光発電システム、電気自動車が内蔵するバッテリーを同時に双方向で利用可能な装置。電気自動車を家庭用の大容量蓄電池とほぼ同じように使える。停電時に太陽光発電を電気自動車の充電に使う、太陽光発電と電気自動車の電力を同時に家庭内で使う、といった使い方ができる。

» 2014年07月04日 14時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 三菱電機は、2014年7月、家庭用の電力変換装置、EV用パワーコンディショナー「SMART V2H」を発表した。価格は95万円。2014年7月31日に発売する*1)

*1) 電力会社との個別の系統連系協議が必要になるため、モニター販売の形を採る。「主な販路は住宅メーカーだ。今回の製品は発売済みのセキスイハイムの住宅と合わせて導入できる」(三菱電機)。セキスイハイムの「グランツーユー V to Heim」である。

 商用電力(系統電力)と太陽光発電システムから得られる電力、電気自動車から得られる電力を日常、停電時とも意識せずに混ぜて使うことが可能であり、このような使い方ができる製品は世界初だと主張する。

せっかくの電源がバラバラ

 同社の問題意識はこうだ。これまでの家庭用電力変換装置には幾つもの課題があった。系統電力、太陽光発電システム、電気自動車それぞれの利用には問題がないが、組み合わせたときに十分に能力を発揮できない。

 まず、太陽光発電システムだ。太陽電池モジュールを大量に導入したとしても停電時に利用できるのは規制のため、1500Wに限られる。残りの電力は無駄になってしまう。

 次に電気自動車だ。電気自動車から家庭に電力を送る「V2H(Vehicle to Home)」は複数製品化されているものの、V2Hを実行すると系統電力や太陽光発電システムからの電力は遮断されてしまう。さらに太陽光発電システムを使って電気自動車を充電することができない。図1左は通常時の様子だ。太陽光発電による売電とV2Hが完全に分かれてしまっている。図1右にあるように停電時にV2Hを使うと、太陽光発電の電力は宙に浮いてしまう。

図1 これまでのV2Hの課題 出典:三菱電機

3種類の新技術で全て解決

 同社はこれらの課題を「電力需給制御システム」と「自立運転時PV連系技術」「シームレス充放電技術」の採用によって解決した。PVとは太陽光発電を指す。

 図2左は通常時の様子だ。電力需給制御システムが3種類の電力を監視し、自動的に使用量を決めている。後述するように、別途家庭用蓄電池を用意しなくても消費電力のピークシフトが可能になる。図2右は停電時の様子だ。シームレス充放電技術により、電気自動車への充電と放電を瞬時に切り替えている。太陽光発電システムから電気自動車に充電しながら、家庭に電力を供給できる。これも家庭用蓄電池を代替する機能だ。従来は充電と放電の切り替えに時間がかかるため、このような使い方はできなかった。

 さらに自立運転時PV連系技術によって、停電時でも最大約6kWの電力を家庭に供給できる。非常用コンセントではなく、通常のコンセントを利用可能だ。

図2 Smart V2Hを利用した時の様子 出典:三菱電機
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