電気を使う?使わない? 真夏の危機を考える横浜エネルギー管理(1/2 ページ)

横浜市は市内3500世帯の協力を得て、国内最大規模の省エネ行動実験を始める。横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)で構築したEMS(エネルギーマネジメントシステム)を骨組みとする実験だ。電力需給がひっ迫した際、電力料金の額や適用時間、報酬を変えて反応を調べる。ユーザーに無理なく省エネを促す仕組み作りに役立てる実験だ。

» 2014年07月11日 15時45分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 横浜市は3500世帯の協力を得て、国内最大規模の省エネ行動実験を始める。2014年7月9日から同9月30日までの期間、電力需給のひっ迫が予想される日が対象だ*1)。電力料金などをさまざまに変えて、世帯ごとの電力使用量を制御する試みだ。効果的な「デマンドレスポンス」とはどのようなものなのかを調べる。

 横浜市は経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域」に選ばれており、複数の企業と連携して「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)」を進めている。4年間でHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を市内の約4200世帯に導入しており、今回はそのうち約7割の世帯が実験に参加する形だ(図1)。東芝がプロジェクトを取りまとめ、パナソニックと東京電力、アクセンチュア、三井不動産レジデンシャルが参加する*2)

*1) 期間中、平日のみ14日程度実施する。実施時間は13時〜16時。
*2) 今回の省エネ行動実験とは別に、約700世帯が東京ガスやJX日鉱日石エネルギーなどの独自の実証に参加する。

図1 YSCPの全体像と実証に参加する部分(クリックで拡大) 出典:東芝

目的は今夏を乗り切ることではない

 省エネ行動実験の目的は、この夏を乗り切ることではない。快適な生活を維持しながら電力需要を減らすにはどのような手法が適するのかを調べる。第1に無理なく行動できる世帯の属性を調査し、都市生活との関係を把握する。その上で省エネ行動のモデルを作る。第2の目的は今後、国が導入を目指している柔軟な電気料金体系を決めるための基礎データを得ることだ。

図2 実証参加者の大まかな内訳と実験内容 出典:横浜市

 デマンドレスポンスが可能かどうかを参加世帯に確認したのち、複数の電気料金(単価)などを導入する(図2)*3)。図2にあるCPP(Critical Peak Pricing)とは、需給がひっ迫しそうな時に適用される割高な料金だ。60円/kWhと100円/kWhの2種類を用いる*4)。適用するかどうかは事前に通知する。

 TOU(Time of Use)は時間帯別の料金だ。需給状況とは無関係に適用する。「東京電力の『半日おとくプラン』*5)を採用した」(東芝)。

 電気料金以外にピーク時報奨金(PTR:Peak Time Rebate)を用いる。需給がひっ迫しそうなときに事前に通知し、消費電力の削減量に応じて節電報酬を支払う。「協力金1万円を約束し、電気料金をa円削減できた場合、1万円+a円を支払う。逆に節電せず、b円出費が増えた場合は、1万円−b円を支払う」(東芝)。節電をしないことに対して罰金で応じるのではなく、報酬を減らすことでやんわりと促す形だ。

 この他、実験に参加した場合の電気料金を参加しなかった場合にも提示するシャドービリング(SB)や、現金の提示(キャッシュ)も盛り込んだ。

 なお、図2にある「自動制御機器世帯」とは、三井不動産レジデンシャルのマンションに居住する世帯を指す。「このマンションにはエアコンの温度設定を自動制御する仕組みが盛り込まれている」(東芝)。

*3) 実際の実証内容は図2に示した概要よりもはるかに複雑だ。「それぞれの料金に対して、何も変更を加えていないコントロール群(対照群)を置き、何が効果を生むのかを確認できるようにしている」(東芝)。図2の最初の1900世帯はさらに7つのグループに分かれる。対照群が2つと、CPP(60円)、CPP(100円)、CPP+TOU、CPP+TOU+SB、CPP+TOU+SB+キャッシュである。2番目の1400世帯は6グループに分かれる。対照群とPTR、CPP+TOU、CPP+TOU+SB、CPP+TOU+SB+キャッシュ、TOU。
*4) 東京電力の個人向けの料金メニューのうち、最も単価が高額なものは「ピークシフトプラン」の夏季(7〜9月)のうち、13時〜16時に適用される54.68円/kWh(税込、以下同じ)。CPPがかなり高額であることが分かる。
*5) 半日おとくプランの夜間料金(21時〜9時)は単価が定額(12.59円)。昼間時間は3段料金(28.38円、37.84円、43.71円)となる。70kWhと170kWhが単価の境目だ。

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