シリコン系で最高水準をうたう、効率96.5%の小型パワコン蓄電・発電機器

デルタ電子は屋外設置が可能な太陽光発電システム用パワーコンディショナー「RPI Hシリーズ」を2014年7月に発売した。4.0kWから5.9kWまで出力の異なる4モデルがある。回路技術を工夫することで、シリコン系パワー半導体を用いながら変換効率を高めたことが特徴。

» 2014年08月04日 16時10分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 デルタ電子は2014年7月に屋外設置が可能な太陽光発電システム用パワーコンディショナー「RPI Hシリーズ」を発売した。出力の異なる4モデルがある。

 RPI H4J(出力4.0kW、図1)とRPI H4.5J(4.5kW)、RPI H5.5J(5.5kW)、RPI H6J(5.9kW)である。4.0kW品と4.5kW品は変換効率が96.5%と高い。その他のモデルの変換効率は96.0%。「同性能の他社製品と比較して価格競争力のある製品だと考える。高機能高価格という位置付けではない」(デルタ電子)。

図1 出力4.0kWのパワーコンディショナー「RPI H4J」 出典:デルタ電子

シリコン系で高い変換効率をうたう

 同社は高い変換効率が実現可能なSiCパワー半導体やGaNパワー半導体などを採用せず、従来と同じシリコン系パワー半導体を採用した理由を次のように明かした。「今回は量産性と経済性を考慮して、シリコン系のパワー半導体を使用し、回路制御技術を駆使して最高の効率を追求した。シリコン系パワー半導体を使い、マルチストリング*1)対応が可能な製品として、96.5%という効率は国内最高レベルだと考える。シリコン系の半導体で97%を達成した他社製品は外付けの接続箱や昇圧箱などが必要であり、太陽光発電システム全体としての効率は下がる」(デルタ電子)。

 ただし、GaNやSiCを見据えた設計を採用しているという。「将来、GaNやSiCがより安価になり、実用性が高まったときに、当社の回路制御技術と組み合わることで、98.5%の変換効率を目指せると考えている」(デルタ電子)。

*1) 多くの太陽光発電システムでは、太陽電池モジュールを何枚か接続してストリングを形成した後、パワーコンディショナーに接続する。太陽電池モジュールの枚数が異なる複数のストリングを接続可能なパワーコンディショナーをマルチストリング対応と呼ぶ。住宅の屋根など、ストリングごとの枚数あわせが難しい用途に向いているものの、一般には非マルチストリング対応の製品と比較して変換効率が低くなる。

 複数台の連系が可能*2)であるため、組み合わせて50kW未満の低圧連系であれば、さまざまな太陽光発電システムに利用できる。日本電機工業会(JEMA)が定めたFRTにも対応している。FRTは系統擾乱(じょうらん)時における運転継続性能を意味する。

*2) 複数台連系での単独運転はステップ注入付周波数フィードバック方式で実現した。

設置環境の自由度が高い

 今回発売した4モデルの主な仕様を図2に挙げる。「入力回路数」という項目がマルチストリング対応を表す。なお、同社によれば屋外設置が可能なモデルとして設置面積が最も小さく、最も軽いという。

図2 パワーコンディショナー4モデルの主な仕様 出典:デルタ電子

 今回の新製品にはさまざまな設置環境に耐えられる性能を持たせた。防塵(じん)防水対策のために放熱板のみによるファンレス、完全密閉構造を採った。環境耐性はIP65*3)。アルミシャーシを用いることで赤さびや腐食などの塩害を防ぐ。

 2014年内には、パワーコンディショナーの通信端子に接続して利用する専用モニターの発売を予定する。専用モニターを導入するか、監視システムを提供するサービス会社と契約することで、遠隔監視が可能になるとした。

*3) IPとはIEC 60529で定められた保護等級。65とは外来固形物浸入に対する保護等級が6級(粉塵が中に入らない)であり、水の浸入に対する保護等級が5級(あらゆる方向からの噴流水による有害な影響がない)という意味。

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