火力燃料費の削減を進める東京電力、高効率化とLNG調達がカギに電力供給(1/2 ページ)

保有する原発が全て停止している東京電力は、火力発電の割合が発電量全体の9割を超えており、その燃料費は経常費用の4割以上を占めるまでに増加。この燃料費の削減に向け、高効率発電所の設置や石炭火力の稼働率向上、運用面の改善などさまざまな取り組みを進めている。

» 2015年05月15日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 2011年3月に発生した東日本大震災以降、保有する原子力発電所が全号機停止した東京電力。現在、電気のほとんどは火力発電によって賄われており、発電電力量に占める火力発電の比率は9割以上となっている。火力の割合が増加したことにより、火力発電所で使用する燃料も震災前と比べて4割増加した。

 特に東京電力の場合、硫黄分を含まず他の化石燃料と比較してクリーンだが、コストがかさむLNG(液化天然ガス)燃料の使用率が7割で他の電力会社と比較して高い。こうした要因も含め、経常費用に占める燃料費が全体の4割を超えるまでに拡大している。そのため東京電力は高効率発電所の設置、運用面の改善などさまざまな取り組みにより燃料費の削減を進めている。

図1 東京電力の火力発電における燃料費の推移 出典:東京電力

 東京電力では最新鋭の高効率発電を導入することで、熱効率の向上を図っている。同社の熱効率は46.9%と世界トップクラスの水準だという。熱効率が高くなると、同じ量の燃料からより多くの電気を生み出すことができるため、燃料消費量が減り燃料費の削減につながる。

 東京電力は東日本大震災当時、川崎2号系列第1軸(神奈川県)、常陸那珂2号機(茨城県)、広野6号機(福島県)の3つの火力発電所の建設を進めていた。このうち太平洋岸に位置する常陸那珂と広野は津波による大きな被害を受け、一度建設を中断していた。しかしその後、24時間作業の導入や工法の工夫を行い、作業の遅れを取り戻している。さらに川崎火力発電所では、1600度C級コンバインドサイクル発電(MACCII)の導入により、世界最高水準の熱効率となる約61%を実現する2号系列第2軸と3軸の建設を進めている。

図2 東京電力が建設を進める川崎火力発電所 出典:東京電力

 運用面の工夫による燃料費削減にも取り組んでいる。電気は大量に貯蔵しておくことができないため、使われる時間に使われる量を発電する必要がある。火力発電所では季節、曜日、時間帯によって変動する電力使用量に応じて発電するとともに、発電毎、ユニット毎の経済性も考慮した運用を随時行うことで燃料費削減を図る。経済性の高い石炭火力やLNGを利用した高効率火力の稼働時間最大化を行うことが重要であるため、トラブルによる運転停止を防ぐとともに、定期的点検期間の工程短縮に向けた活動も進めている。

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