太陽光発電の接続可能量が2種類に、原子力の再稼働を待つ姿勢は変えず法制度・規制(1/2 ページ)

2015年1月に始まった再生可能エネルギーの接続に関する新ルールで、地域ごとに「接続可能量」が決められた。実態は電力会社が太陽光発電の導入量を抑えて原子力の再稼働に備えるための対策だ。政府は接続可能量を定期的に見直すとしていた当初の方針を転換して2種類の算出方法に変更する。

» 2015年10月14日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 政府は再生可能エネルギーを拡大する施策を進めると訴えながらも、実際には抑制する対策を打ち出している。代表的なものが2015年1月に導入した地域別の「接続可能量」である。太陽光や風力による発電設備の累計が接続可能量を超えると、電力会社が状況に応じて無制限・無補償で発電設備の出力を抑制することができる。

 現在のところ東京・中部・関西を除く全国7つの地域で接続可能量が決められている(図1)。7月末時点で送配電ネットワークに接続済みの発電設備と接続契約を申し込んだ発電設備を合わせると、すでに北海道・東北・九州では接続可能量を超えている。新たに接続を申し込んだ太陽光発電設備は電力会社の判断で無制限・無補償の出力制御に応じることが義務づけられる。

図1 太陽光発電設備の「接続可能量」と接続状況。出典:資源エネルギー庁

 ところが接続可能量を算出するにあたって、各電力会社は運転可能な原子力発電所をすべて再稼働させることを前提にした。その中には3月に廃止が確定した九州電力の「玄海原子力発電所」の1号機(出力55.9万kW)も含まれている。当然ながら玄海1号機の廃止によって九州の太陽光発電の接続可能量は増えるはずだが、現在も修正しない状態が続いている。

 こうした電力会社の思惑を支援するかのように、資源エネルギー庁が接続可能量を2種類に分ける新たな方針を10月9日の「新エネルギー小委員会」で明らかにした。2種類のうち1つは年度ごとに最新の需要と供給の実績をもとに接続可能量を算定する「年度算定値」で、より実態に近い数値になる。もう1つは出力制御の実施を前提に従来の接続可能量を据え置いた「30日等出力制御枠」である(図2)。

図2 新たに設定する2種類の「接続可能量」。出典:資源エネルギー庁

 もともと接続可能量の定義がわかりにくいうえに、2種類に分けて複雑にした。資源エネルギー庁と電力会社の常とう手段と言えるもので、難解な理論を持ち込んで結果として有利な状態を作り出す狙いだ。資源エネルギー庁の資料には年度ごとの算定値は「あくまでも機械的な試算値に過ぎない」と明記されていて、電力会社が基準にする接続可能量は数値を変更しない「30日等出力制御枠」である。

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