世界の空調機器市場を舞台に、日本メーカーの主導権争いが白熱省エネ機器(1/3 ページ)

世界の空調機器市場で日本メーカーが活発な動きを見せている。日本メーカーによる欧米メーカーの買収や提携、合弁会社の設立などによる主導権争いが繰り広げられているのだ。

» 2015年10月14日 15時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 空調機器はジャパンブランドが依然強い競争力を持つ製品の1つである。市場規模も今後着実に拡大するとみられている。その成長市場で、日本メーカーの主導権争いが活発化している。欧米メーカーの買収や提携、合弁会社の設立などが繰り広げられているのだ。狙いとしているのは、機器ラインアップの補完と海外の各地域市場での販売力強化である。さらにビルソリューションや新規事業への展開なども視野に含む。

 日本メーカーの高い省エネ性能や優れた操作性を持つ家庭用のルームエアコン(RAC)や店舗やオフィス向けのパッケージエアコン(PAC)、ビル用マルチエアコン(VRF)などを中心に展開しているが、欧米メーカーの持つ大規模な施設やDHC(地域冷暖房)などにも対応できる超大型業務用空調機器を組み入れることで、総合的な空調事業の展開が可能になる。また、その地域で培ってきた欧米メーカーの販売チャンネルの活用により、ルート開拓がスムーズに行える。さらに、海外メーカーの持つ新技術の獲得で、新しい事業の展開などにもつながることが期待されている。

日立とジョンソンコントロールズとの合弁

 2015年10月1日、日立製作所および日立アプライアンス(日立AP)が米国ジョンソンコントロールズ(Johnson Controls)と合弁会社、ジョンソンコントロールズ日立空調を設立し、業務を開始した。新会社の株式はジョンソンコントロールズが60%、日立APが40%所有し、CEO(最高経営責任者)にはジョンソンコントロールズのフランツ・サーウィンカ氏が就任。COO兼社長には、日立APの飯塚愼一常務空調事業部長が就いた(図1)。売上高は3500億円(約28億米ドル)以上、約1万4000人の従業員が、アジア、欧州、南米など24の製造拠点で設計、エンジニアリング、製造に従事する。

photo 図1 ジョンソンコントロールズ日立空調のCEOであるサーウィンカ氏(右)と社長の飯塚愼一氏

 日立APは日立製作所の白モノ家電と空調事業を担当するグループ会社だ。2014年度の売上高は6888億円(前年比5%増)で、このうち空調事業は3966億円(同16%増)と半数以上を占める。扱う製品はルームエアコン(RAC)からパッケージエアコン(PAC)、ビル用マルチエアコン(VRF)などの業務用空調。さらに吸収式冷凍機、ターボ冷凍機など大規模施設やDHCなどにも対応する大型冷凍機まで幅広い。

 海外の売り上げが国内よりも大きく、伸長率も同36%増と海外市場の方が好調だ。地域的には台湾、中国などの比率が大きく、欧州、インドでも積極的展開している。今回の合弁会社設立で国内市場は、BtoBルートの営業・サービスについては日立APがそのまま引き継ぐ。RACなどのBtoCルートの営業・サービスもこれまでと同じく家電販社の日立コンシューマ・マーケティングが担当する。

 一方のジョンソンコントロールズは世界150カ国以上で展開するグローバル企業。13万人の従業員がビルのエネルギー効率や運用効率を最適化する製品、サービス、ソリューションをはじめ自動車用鉛酸バッテリーおよびハイブリッド車・電気自動車用先進バッテリー、自動車シートコンポーネントの開発などに取り組んでいる。

 新会社では、これらジョンソンコントロールズの優れたHVAC(暖房・換気・空調)やビルオートメーションソリューションに、日立APのPAC、RAC、VRF、高効率チラー、スクロール圧縮機など加わり、幅広い製品ポートフォリオが実現した。さらに相互補完的な販売チャンネルにより、積極的な市場拡大が期待される。既に日立APが進出を目指していた北米市場で、先に締結したOEM契約に基づき、同市場向けVRFを開発しジョンソンコントロールズのチャンネル経由での販売を開始している。また、2015年8月にはテキサス州・ダラスにVRFトレーニングセンターをオープンした。

 合弁会社設立に対してサーウィンカ氏は「新会社には多くのシナジーがある。今後、製品技術への投資を加速する他、拡大する販売チャンネルを活用したグローバル展開をより積極的に進めて2020年までに50%成長を目指す」と売り上げ拡大に向けて意欲を示した。

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