新たに登録が決まった小売電気事業者の中では、長崎県を拠点に電力事業を展開するHTBエナジーの取り組みが目立つ。佐世保市でテーマパークを運営するハウステンボスが中心になって設立した会社で、北陸・四国・沖縄を除く全国7地域で「たのしいでんき」を家庭向けに販売する。
シンプルでわかりやすい料金プランを設定している点が特徴だ。電力会社が家庭向けに提供している標準プランの「従量電灯」を対象に、一律5%を割り引く(図3)。しかも基本料金と電力量料金の両方が割引の対象になる。契約電力が小さい10〜20A(アンペア)でも同様の割引を受けることができるため、毎月の電力使用量が少ない家庭にもメリットがある。
販売する電力の供給源にはCO2(二酸化炭素)排出量の少ない再生可能エネルギーとLNG(液化天然ガス)火力を多く使う方針だ。九州では大分県の別府市で地熱発電所を稼働させるなど、自社でも再生可能エネルギーの電源を拡大していく。
このほかにエネルギーの地産地消を推進する地域特化型の小売電気事業者が続々と登録を完了して顧客獲得に乗り出す。新たに登録審査を通過した事業者の中では、和歌山電力が代表的な例だ。和歌山県内の電力を買い取って、県内の家庭や企業に安い価格で販売する(図4)。家庭の場合には月間の使用量が200kWh(キロワット時)を超えると、電力量料金の単価が関西電力よりも20%安くなる。この料金プランもわかりやすい。
地域特化型では神奈川県で活動する湘南電力の取り組みもユニークだ。神奈川県と協定を結んで、県の補助金を受けながら太陽光発電などの電力を県内の企業に供給している(図5)。さらに収益の一部をパートナー企業の地域貢献活動の資金として還元する。現在はプロサッカーチームの「湘南ベルマーレ」がパートナー企業になっている。
地域特化型の小売電気事業者には単に電力を安く販売するだけではなく、発電事業や観光事業などと組み合わせて地域の活性化を図る狙いがある。電力の小売全面自由化は地方創生にも生かすことができる。
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