水素エネルギーの国家プロジェクト、2020年に低炭素な街づくりを実証自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2016年03月08日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

最先端の科学技術で水素を安く製造

 エネルギーキャリアの研究開発は内閣府の「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)」として取り組む一方、関連する技術の研究開発を文部科学省・経済産業省・環境省が連携しながら推進していく(図4)。

図4 水素関連の研究・技術開発テーマ(画像をクリックすると拡大)。出典:内閣府

 文部科学省では理化学研究所が「エネルギーキャリア製造次世代基盤技術」を開発中だ。具体的には2つの研究テーマがある。1つは「中性の水を用いた水分解による水素の創出」だ。CO2フリーの水素は水を分解して作る方法が一般的だが、分解の工程で希少金属を使う必要があるなど実用化に向けた課題が残っている。

 そこで希少金属を使わずに、雨水や海水といった自然に入手できる中性の水を原料に使って水素を製造する。植物は光合成の過程でマンガン(Mn)を触媒にして水を分解する特性がある。それと同様の反応を酸化マンガン(MnO2)で起こして、中性の水を効率的に分解できるシステムを開発する取り組みだ(図5)。

図5 理化学研究所の「中性の水を用いた水分解による水素の創出」(上)と「省エネルギーな革新的アンモニア合成法の開発」(下)の原理。出典:文部科学省

 もう1つの研究テーマは「省エネルギーな革新的アンモニア合成法の開発」である。気体の水素を液体のアンモニアに変換するためには高温・高圧の条件を作り出す必要があり、大量のエネルギーを消費してしまう。代わりに窒素(N)とチタン(Ti)を使って常温・常圧で水素からアンモニアを合成することが可能だ。理化学研究所は合成に必要な反応効率を向上させながら製造技術の実用化を目指す。

 同様に水素製造の分野では、経済産業省が低コストで水を電気分解する技術の開発を進めている。2014〜2022年度の9年間かけて実施する「革新的水素エネルギー貯蔵・輸送等技術開発」のプロジェクトで、アルカリ水などを利用した水素製造技術を開発中だ。さらにエネルギーキャリアに関連する液化水素タンクの大容量化を通じて、水素の供給コストを低減して水素社会の拡大を促進していく(図6)。

図6 経済産業省の「革新的水素エネルギー貯蔵・輸送等技術開発」。出典:経済産業省

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