2016年4月1日は日本のエネルギー産業にとって大きな節目になる。家庭向けの電力小売を自由化するのと同時に、従来の電力会社を頂点とする市場構造の転換が始まるからだ。電力会社を含めて300社を超える事業者が料金とサービスの両面で競争して需要家にメリットをもたらす。
第56回:「電力会社に独占禁止法の新たな規制、スイッチングの妨害などが対象に」
旧態依然とした日本の電力システムを改革する第2フェーズが動き出す。全国で8000万を超える家庭と商店の需要家に向けて、これまで電力会社だけに限定していた小売事業が4月1日から解禁になった(図1)。
企業向けを含めて電力を販売できる小売電気事業者は3月25日の時点で266社にのぼる(図2)。さらに登録を申請済みの事業者が50社以上もあり、合わせて4月中に300社を突破することは確実だ。一方で市場を守る立場の電力会社も「みなし小売電気事業者」になって対抗していく。
小売全面自由化による最大の変化は家庭・商店向けの料金メニューが広がることだ。従来は電力会社が国の認可を受けて提供する標準メニュー(供給約款)のほかに、時間帯別などで単価を変えた「選択約款」の2通りがあった(図3)。4月1日から家庭・商店向けの料金メニューは大きく分けて4通りに拡大する。
電力会社の小売部門が従来の「供給約款」と同様に国の認可を受ける「経過措置約款」の提供を続ける一方、「選択約款」に代わって自由に料金を設定したメニューも提供できる。それに対抗して小売電気事業者も自由料金メニューで競争していく。このほかに競争が生まれにくい離島を対象に、電力会社の送配電部門(一般送配電事業者)が国の認可を受けて「離島供給約款」で電力を販売する体制になる。
自由な競争を促進しながら、電力会社に引き続き「経過措置約款」と「離島供給約款」を義務づけて、全国の需要家が自由化以前の料金でも電力を購入できる仕組みだ。たとえ競争が進まない地域が出てきても、電力会社は国が認めない限り電気料金を値上げすることはできない。
この措置は電力会社の発電・送配電・小売部門を分割する「発送電分離」(2020年4月に実施予定)の後も、送配電部門が引き継ぐことになっている。すでに東京電力は2016年4月1日付けで火力発電・送配電・小売部門を分社化して、発送電分離の準備を開始した(図4)。
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