九州電力グループが鹿児島県の指宿市で稼働中の地熱発電所に新しい設備を建設する。これまで発電に利用していなかった熱水を使って、水よりも沸点の低い媒体を蒸発させて発電する計画だ。2018年2月に運転を開始する予定で、一般家庭の8000世帯分に相当する電力を供給できる。
温泉地で有名な鹿児島県の指宿市(いぶすきし)にある「山川(やまがわ)発電所」は、1995年に運転を開始した九州電力で2番目に大きい地熱発電所である(図1)。地下から湧き出る高温の蒸気を使って、発電能力は30MW(メガワット)に達する。
これまで蒸気と一緒に噴出する熱水は発電に利用しないまま地下に戻していた。新たに熱水を使って発電する「山川バイナリー発電所」を構内に建設して、再生可能エネルギーによる電力の供給量を増やす。8月中に工事に着手して、1年半後の2018年2月に運転を開始する予定だ。
発電能力は5MWを想定している。年間の発電量は3000万kWh(キロワット時)程度になる見込みで、一般家庭の使用量(3600kWh)に換算して8000世帯分を上回る。指宿市の総世帯数(1万9000世帯)の4割をカバーできる発電量になる。九州電力が熱水を供給して、グループ会社の九電みらいエナジーが発電所を建設・運営する。
九電みらいエナジーは同様の発電方式による「菅原バイナリー発電所」を大分県の九重町(ここのえまち)で2015年6月から運転中だ(図2)。発電能力は同じ5MWで、九重町が所有する地熱井(ちねつせい)から蒸気と熱水の供給を受けて発電に利用している。
いずれのバイナリー発電所の電力も固定価格買取制度で売電する。発電能力が15MW未満の地熱発電の買取価格は1kWhあたり40円(税抜き)に設定されている。年間の売電収入は1カ所で12億円にのぼる見込みだ。固定価格買取制度による地熱発電の買取期間は太陽光や風力などよりも短い15年だが、それでも売電収入は累計で180億円に達する。
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