通常の地熱発電では地下から湧き出る蒸気と熱水を分離して、高温の蒸気だけを使ってタービンを回転して発電する。分離後の熱水は地下に還元する仕組みになっている。これに対して「バイナリー方式」では分離後の熱水をさらに低温の蒸気と熱水に分離して、発電用の媒体を蒸発させる熱として利用する(図3)。蒸発した媒体でタービンを回転させて発電することができる。
この媒体には沸点が36度のペンタンを使うケースが多い。発電後には媒体を冷やして液体に戻してから、再び蒸気と熱水を使って蒸発させる方法だ。熱を取り出すサイクルと媒体を循環させて電力を作るサイクルの2つを組み合わせることから、2進法を意味するバイナリーで呼ばれる。
九州電力は2013年から2年間かけて、山川発電所の構内で小規模の地熱バイナリー発電設備を使って実証試験を実施した(図4)。発電能力は0.25MWで、九電みらいエナジーが新たに建設するバイナリー発電設備の20分の1の規模だ。この実証試験を通じて商用運転の可能性を検証した。
九州は北海道や東北と並んで地熱資源が豊富にある。九州電力は大分県で3カ所、鹿児島県で2カ所の合わせて5カ所で大規模な地熱発電所を運転中だ(図5)。このうち規模が最大の「八丁原(はっちょうばる)発電所」(発電能力110MW)では、2006年に初めてバイナリー発電設備(2MW)を稼働させた。
さらに「滝上(たきがみ)発電所」(27.5MW)でも、発電用の地熱を供給する出光グループがバイナリー発電所(5.1MW)の建設を進めている。運転開始は2017年3月を予定している。
地熱バイナリー発電は新規に地熱井を掘削する必要がない。このため短期間に運転を開始できて、環境に対する影響も小さく抑えられる。天候による出力の変動がなく、安定した電力を供給できる点で有利だ。最近では温泉水を利用した小規模な地熱バイナリー発電が全国に広がり始めている。
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