小売事業者の供給力確保義務量の2030年案が明らかに 「中長期取引市場」の新設も第7回「電力システム改革検証制度設計WG」(1/4 ページ)

資源エネルギー庁の「電力システム改革検証制度設計ワーキンググループ」の第2回会合で、電気事業法に基づく小売電気事業者の2030年における供給力の確保義務量や、中長期の供給力調達環境の整備を目的とした新市場の創設などが検討された。

» 2025年12月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 電気事業法では小売電気事業者に対して供給能力の確保義務を課しており、現在これは容量市場における容量拠出金を支払う義務(kWに対する金銭支払義務)と整理されている。

 第7次エネルギー基本計画では、電力の安定供給や需要家保護、料金水準の過度な変動抑制等の観点から、小売電気事業者に安定的な事業実施を求めるための規律や、量的な(kWh)供給力確保の在り方について検討することとしている。

 このため、資源エネルギー庁の「電力システム改革検証制度設計ワーキンググループ(WG)」第2回会合では、各小売電気事業者に対して新たに、自社想定需要(kWh)について、以下に相当する供給力(kWh)の確保を求める案が示された。

  • 実需給の3年度前(N-3年度)に5割
  • 実需給の1年度前(N-1年度)に7割
図1.量的な供給力(kWh)の確保のイメージ 出典:電力システム改革検証制度設計WG

 またこれに伴い、相対取引以外にも中長期の供給力(kWh)調達環境を整備するため、新たに「中長期取引市場」の創設が提案された。同WGの第7回会合では、小売事業者の量的な(kWh)供給力確保義務の詳細や、中長期取引市場の具体像が示された。

kWh確保義務の対象となる小売事業者

 電気事業法上の供給力確保義務として新たに「量的な供給力(kWh)」の確保を求める観点からは、全ての小売電気事業者に等しく義務の履行を求めることが適切である。ただし、小規模な小売事業者にとっては、相対的に負担が大きいと想定されるため、本措置の運用開始から一定の期間(例えば5年間)については、確保すべき供給力量を軽減する措置を講ずることとした。

 軽減対象とする小売事業者の規模としては、エネルギー供給構造高度化法における基準を参考として、過去の一定期間(例えば3年間)の販売電力量の平均が「5億kWh」を下回る事業者とする。2023年度において、これら小規模事業者の販売電力量の合計は、日本全体の総需要の3%程度である。

 軽減措置の水準としては、実需給年度の各小売事業者の想定需要に対して、実需給の1年度前(N-1年度)に5割、実需給の3年度前(N-3年度)に2.5割とする。

表1.kWh確保義務の軽減水準 出典:電力システム改革検証制度設計WG

 会社分割等による義務の潜脱を防ぐため、グループ会社は販売電力量を合算する等の公平性の確保策を検討する予定としている。

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