木質バイオマス発電で3万世帯分の電力、リニア新幹線の残土処分地に自然エネルギー(1/2 ページ)

山梨県の大月市で大規模な木質バイオマス発電所の建設工事が始まった。市内を走るリニア新幹線の実験線の工事で発生した残土の処分地を活用する。2年後の2018年8月に運転を開始して、年間の発電量は3万世帯分に達する見込みだ。燃料の木材は周辺地域の剪定枝や間伐材を調達する。

» 2016年08月15日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 建設会社大手の大林組が8月3日に「大月バイオマス発電所」の工事に着手した。山梨県の大月市にある2万平方メートルの広大な敷地に、景観にも配慮したデザインで発電所を建設する計画だ(図1)。発電能力は14.5MW(メガワット)に達して、内陸部の木質バイオマス発電所としては国内で最大級の規模になる。運転開始は2018年8月を予定している。

図1 「大月バイオマス発電所」の完成イメージ。出典:大林組

 年間の発電量は1億1000万kWh(キロワット時)程度になる見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると3万世帯分の電力で、大月市の総世帯数(1万世帯)の3倍に匹敵する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で東京電力に売電する。発電所の総投資額は約100億円で、年間に約20億円の売電収入を想定している。

 燃料の木質バイオマスは家庭などから廃棄物として出る剪定枝(せんていし)を中心に、周辺地域の森林で発生する間伐材や土場残材なども利用する方針だ(図2)。各種の木材を粉砕した木質チップの状態で年間に約15万トンを調達する。

図2 発電事業の全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:大林組

 発電所の建設地は東京を起点とする国道20号線や中央自動車道にも近く、半径50キロメートル以内には東京・神奈川・埼玉県の西部が入る(図3)。首都圏とつながる交通網を生かして、各地で発生する用途のない木材を広範囲に調達できる利点がある。

図3 発電所の建設地(上)、燃料調達エリア(下、番号は国道を示す)。出典:大林組

 大月市には2027年に開業予定の「中央新幹線」の一部になる「山梨リニア実験線」が通っている(図4)。超電導リニア方式で走る中央新幹線は路線の大半をトンネルが占めることから、自然環境保護の問題と同時に、トンネルを掘った後の残土の処分が大きな課題だ。バイオマス発電所の建設は残土処分地を有効に活用する目的で、山梨県と大月市が協力して準備を進めてきた。

図4 「山梨リニア実験線」のルート。出典:鉄道建設・運輸施設整備支援機構
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