2016年4月から全面自由化された電力小売市場が、新たな局面を迎えている。スイッチング件数の伸びに勢いがなくなり、新電力各社は“お得感”だけではない新たな価値を模索している。そんな中、自然エネルギーを前面に出した新電力会社が好調だ。本連載ではさまざまなスタイルで事業展開を図る、自然派新電力についてリポートする。
電力小売全面自由化がスタートして、2016年7月末で4カ月が経過した。電力会社の契約先の切り替え(スイッチング)状況を取りまとめている電力広域的運営推進機関によると、7月末までのスイッチング件数は、全国で累計147万3000件。総契約数の2.4%が電力会社を切り替えたことになる。この数字をどう評価するかは判断の分かれるところだが、直近1カ月(7月)のスイッチング件数は約20万件にとどまっており、小売全面自由化スタート当初の盛り上がりは既に収束傾向にあると言わざるを得ない。
今後、スイッチング件数を伸ばしていくためには、様子見をしている消費者をどれだけ動かせるかがポイントとなる。そのためには、スイッチングの意義を幅広くアピールすることが必要だ。これまでは割安料金やセット割など、いかに“お得感”を出すかが競われてきたが、これからは価格だけではない価値を訴求していくことが重要になってくる。
価格は大きなスイッチング要因となってきたが、東京電力はじめ大手電力会社(旧一般電気事業者)も新しいお得なプランを打ち出している。もはや、価格だけでスイッチングのメリットを提示することは難しい。特に資本力に限界のある中小の事業者が生き残っていくためには、価格競争に巻き込まることは避けなければならない。独自の差別化要因がなければ、これから本格化する競争を勝ち抜いていくことは困難だろう。
こうした状況にあって、価格を超えた価値を提示することで着実に契約を伸ばしているのが、自然エネルギーを前面に押し出した新電力会社。FIT電気をはじめ再生可能エネルギー由来の電源を重視する、いわば自然派新電力会社だ。絶対数では価格訴求の大手新電力会社に及ばないものの、自然エネルギーにこだわりをもつ消費者からの根強い人気を集めている。
再生可能エネルギー由来の電気を特徴とする新電力会社といっても、その背景や事業スキームは多種多様。大別しただけでも、1.再エネベンチャー系、2.地域新電力系、3.自治体系、4.生協系、5.大手新電力系、6.その他(太陽光発電とのセット)の6タイプをみることができる。次のページでは代表的な企業を例に、各タイプの特徴を説明する。
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