町営の小水力発電所が動き出す、大都市には最先端の下水バイオマスエネルギー列島2016年版(30)和歌山(2/3 ページ)

» 2016年11月15日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

下水処理場に革新的なバイオマス発電

 和歌山県にはバイオマス発電の先進的なプロジェクトもある。人口が35万人を超える県内最大の和歌山市では、下水の汚泥を利用した高効率の発電設備の実証に取り組んだ。国が推進する「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」の一環で導入した設備である(図5)。

図5 「和歌山市中央終末処理場」の下水汚泥エネルギー転換システム。出典:国土交通省

 市内に3カ所ある下水処理場の中で最大の「和歌山市中央終末処理場」の構内に2014年に完成した。下水の汚泥を脱水してから、焼却処理する時の廃熱を回収して蒸気で発電する。さらに発電した後の温水を使って、低温の熱でも効率よく発電できるバイナリー方式で2段階に電力を作ることができる(図6)。

図6 実証プラントの処理の流れ(上)、設備構成(下、画像をクリックすると拡大)。出典:和歌山市ほか

 1日あたり35トンの下水汚泥を燃料に利用した場合に、発電能力は2つの発電機を合わせて120kWになる。小型の蒸気タービン発電機とバイナリー発電機を組み合わせる方式を採用したことで、従来は発電設備の導入がむずかしかった小規模な下水処理場にも設置できるメリットがある(図7)。

図7 スクリュー式の小型蒸気発電機(左)、バイナリー発電機(右)。出典:和歌山市ほか

 さらに汚泥を焼却して廃熱を回収する設備に低消費電力の技術を導入した(図8)。階段式の焼却炉と廃熱ボイラーを組み合わせたもので、従来の方式と比べて消費電力を4割も低減できる。このエネルギー回収設備で電力を消費しても、廃熱を使って発電した電力の余剰分が生まれて売電が可能だ。

図8 エネルギー回収設備(次世代型階段炉+廃熱ボイラー)の外観。出典:和歌山市ほか

 下水汚泥のもつエネルギーから電力と熱に高効率に転換できるシステムの効果が実証運転を通じて検証できた。国土交通省は下水処理場のエネルギー消費量を削減できる革新的な技術として、和歌山市の事例をもとに導入のガイドラインをまとめて全国各地に普及を図る。

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