世界初の地熱+水力ハイブリッド発電、地下に戻す熱水で電力を増やす:自然エネルギー(2/2 ページ)
ハイブリッド技術に取り組むエネル・グリーン・パワーは米国内の別の地域にある地熱発電所では、太陽熱と太陽光を組み合わせたトリプル発電も実施している。ユタ州と同様に火山地帯が広がるネバダ州で稼働中の「スティルウォーター(Stillwater)発電所」に導入した(図4)。
図4 「スティルウォーター発電所」の全景(上)、太陽光パネルの設置状態(下)。出典:Enel Green Power
この地熱発電所は2009年に運転を開始して、バイナリー方式で33MWの電力を供給できる。2012年には発電所の周辺に広がる平地に、26MWの太陽光発電所を併設した。さらに2015年に太陽熱を利用した2MWの発電設備が稼働したことで、3種類の再生可能エネルギーによるトリプル発電が完成した(図5)。
図5 地熱+太陽光+太陽熱によるハイブリッド発電設備。出典:Enel Green Power
太陽光と太陽熱による発電量は地熱単独の場合と比べて3.6%増加した。しかも年間のうち日射量が多い熱い夏には地熱の発電効率が低くなるため、太陽光と太陽熱による発電量が地熱発電の減少分をカバーする効果もある。
米国には火山地帯が多く、地熱の資源量・発電量ともに世界のトップにある。エネル・グリーン・パワーは今後も地熱発電を中心に、再生可能エネルギーのハイブリッド技術の導入プロジェクトを推進していく方針だ。
- 世界の発電量の22.8%が再生可能エネルギーに、風力・太陽光・水力が伸びる
2014年も世界各国で再生可能エネルギーの導入が活発に進んだ。火力や原子力を含む全世界の発電量に占める比率は22.8%へ上昇した。発電設備の容量は1年間に17%増えて、特に風力・太陽光・水力の伸びが大きい。国別では中国がトップを走り、日本は水力を除くと第6位に入る。
- 地熱発電所で利用できない熱水から、8600世帯分の電力を作る
出光グループは大分県にある九州電力の地熱発電所に、地下からくみ上げた高温の蒸気を供給している。同時に湧き出る低温の熱水は発電に使えなかったが、新たにバイナリー方式の設備を導入して地熱発電を開始する。発電能力は5MWで、一般家庭の8600世帯分に相当する電力を供給できる。
- 地熱発電:世界3位の資源量は4000万世帯分、6割が開発可能
世界の中で地熱の資源量が群を抜いて多いのは米国、インドネシア、日本の3カ国だ。このうち日本の地熱発電の導入量は他国の半分以下にとどまっていて、開発の余地は極めて大きい。発電コストはガス火力並みの10円前後と安く、地熱資源が集中する自然公園の規制緩和も進んできた。
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