廃棄物発電がうどんから下水へ、ため池には太陽光発電をエネルギー列島2016年版(37)香川(1/3 ページ)

面積が全国最小の香川県の再生可能エネルギーは太陽光とバイオマス発電が中心だ。バイオマスでは廃棄物を再利用する取り組みが活発で、うどんカスに続いて下水や生ごみから燃料を作って発電に活用する。年間を通して雨が少ない利点を生かして、ため池の水上に太陽光発電を展開していく。

» 2017年01月10日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 香川県の中央に位置する高松市で大規模なバイオガス発電設備が2016年2月に運転を開始した。市内で最大の下水処理能力がある「高松市東部下水処理場」の構内に、7億7000万円の事業費と2年近い工事期間をかけて導入した発電設備だ(図1)。

図1 「高松市東部下水処理場」のバイオガス発電設備(画像をクリックすると拡大)。出典:高松市上下水道局

 1台あたり25kW(キロワット)のバイオガス発電機20台で構成して、全体の発電能力は500kWになる。年間に161万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して450世帯分に相当する。さらに発電時の熱を利用できる温水貯留タンクも備えている(図2)。

図2 下水処理場の施設(上)、バイオガス発電の主要設備(下)。出典:高松市上下水道局

 発電した電力は固定価格買取制度で売電して、年間に6200万円の収入を得られる見込みだ。買取期間の20年間の累計では12億4000万円に達する。導入当初の事業費と毎年の運転維持費を加えても十分に採算をとることができる。

 下水の処理方法は汚泥部分を発酵させて、メタンガスを抜いて体積を減らす方法が一般的だ(図3)。高松市の東部下水処理場では、発生したメタンガスを発酵用の消化槽の加温や管理棟内の冷暖房に利用してきた。

図3 下水処理の流れとバイオガス発電。出典:高松市上下水道局

 バイオガス発電設備を導入したことで、発電時の熱を引き続き消化槽の加温に生かしながら、新たにCO2(二酸化炭素)を排出しない再生可能エネルギーの電力を作って売電できるようになった。売電で得られた収益は下水処理場の維持管理費に役立てる。

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