噴気災害を起こした古い地熱発電所、設備を更新して2023年度に運転再開へ自然エネルギー(1/2 ページ)

宮城県の内陸部で40年以上にわたって運転を続けている地熱発電所がある。2010年に噴気災害を起こして設備の一部が損壊した。地中から蒸気と熱水をくみ上げる生産井や地中に熱水を戻す還元井を含めて、発電所の設備を一新する。設備の更新後は2万5000世帯分の電力を供給できる見込みだ。

» 2017年02月09日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 設備の全面更新を実施するのはJパワー(電源開発)の「鬼首(おにこうべ)地熱発電所」である。宮城県の北西部に広がる大崎市の山中で1975年に運転を開始した(図1)。発電能力は当初は12.5MW(メガワット)だったが、蒸気量が多く得られることから2010年2月に設備を増強して15MWに引き上げた。

図1 「鬼首地熱発電所」の所在地と全景。出典:Jパワー

 ところが8カ月後の2010年10月に、地中から蒸気と熱水をくみ上げる生産井(せいさんせい)の1カ所の近くで、黒色の噴出物が上空250メートルの高さまで大量に噴出する事態が発生した(図2)。残念ながら運転員1名が亡くなってしまった。その後は噴気が収まり、現在は発電能力を落として運転を続けている。

図2 2010年10月に発生した噴気災害。噴気口周辺(上)、噴出物の堆積状況(下)。出典:Jパワー

 Jパワーが外部の専門家を交えて調査した結果、突然の噴気の発生には2つの原因が考えられた。発電所がある鬼首地域の地下には浅い部分に高温の流体がたまる構造になっていて、自然に圧力が蓄積して水蒸気爆発を起こした状況が想定できる。もう1つは生産井の一部が破損していて、そこから蒸気が漏れて地下に蓄積して噴出した可能性もある。どちらが原因かは特定できなかった。

 すでに運転開始から40年以上が経過していることから、今後も安定稼働させるためには生産井を含めて設備の更新が不可欠だ(図3)。Jパワーは2016年6月から環境影響評価の手続きを開始して、2023年度に新しい発電設備の運転開始を目指している。環境影響評価は4段階にわたって国や地元の意見を集約するプロセスを経て工事に着手できる。2017年2月7日から第2段階の「方法書」の手続きに入った。

図3 地熱発電所の敷地(画像をクリックすると周辺地域も表示)。出典:Jパワー
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