家庭の省エネを初期費用ゼロで、電気代の節約分で冷蔵庫を買い替え省エネ機器(1/2 ページ)

消費電力量の大きい冷蔵庫を初期費用ゼロで買い替える社会実証が静岡県内の一般家庭で実施中だ。地元のガス会社が無償で冷蔵庫を設置して、毎月の電気代の節約相当分を家庭から受け取る。最新の冷蔵庫に買い替えたことで消費電力量を6割以上も削減できた。家庭に省エネ機器を普及させる有効な手段になる。

» 2017年02月27日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 低炭素社会の実現手法を研究・提案する科学技術振興機構(JST)が東京大学と静岡ガスの3者共同で、「電気代そのまま払い」と呼ぶ社会実証プロジェクトを静岡県の三島市で実施している。市内の2世帯を対象に、リース契約で最新の冷蔵庫に買い替えてもらい省エネ効果と電気代の節約額を検証する(図1)。初期費用ゼロで冷蔵庫の消費電力量を大幅に削減することが目的だ。

図1 初期費用ゼロで冷蔵庫を買い替える仕組み(金額は三島市のAさん宅の場合)。出典:JST、東京大学、静岡ガス

 実証の対象になった家庭では、冷蔵庫を買い替える前には年間消費電力量の34〜40%を冷蔵庫が占めた(図2)。Aさん宅の冷蔵庫は1995年に製造、Bさん宅では2003年に製造した冷蔵庫を使っていた。この2世帯で最新の冷蔵庫に買い替えて、消費電力量をもとに電気代の節約額と省エネ効果の検証を続けている。

図2 冷蔵庫を買い替える前の電気代(年間消費電力量)の割合。出典:JST、東京大学、静岡ガス

 Aさん宅では2016年7月に18万円の冷蔵庫をリース契約で購入した。以前と比べて消費電力量を7分の1に削減できる想定だ(図3)。一方のBさん宅では28万円の冷蔵庫を同年12月に購入、消費電力を4分の1に低減する。それぞれ冷蔵庫のカタログ値から消費電力量の減少分を計算して、毎月の電気代の節約額を算出した。

図3 買い替え前後の消費電力量と電気代(27円/kWhで計算)。kWh:キロワット時。出典:JST、東京大学、静岡ガス

 電気代の節約分をリース契約の返済にあてることで、Aさん宅では約7年、Bさん宅では約10年で返済を完了する。返済完了後も無償で冷蔵庫を使うことができるため、引き続き従来よりも少ない電気代で済む見込みだ。

 買い替え後に冷蔵庫の消費電力量を計測したところ、Aさん宅では最初の5カ月間で前年同時期の27%だった。カタログ値では15%に減る想定だったことから、それを上回っている。Bさん宅でも最初の1カ月間の消費電力量は前年同時期の35%になり、カタログ値の26%を上回る状況だ。1カ月あたりの電気代は想定よりも270円程度の負担増になっている。

 プロジェクトチームは今後も消費電力量の計測を続けて、季節による変化や想定値と実測値の差異を検証する。現状でも若干のコスト負担で冷蔵庫を買い替える効果は明らかになった。特に年金の支給を受けている高齢者の家庭では、省エネ型の家電製品に買い替える有効な手法になる可能性がある。

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