こうして合成したSrTiO3メソ結晶に触媒反応を促進する助触媒を付着させ、水中で紫外光を照射したところ、約7%の光エネルギー変換効率で反応が進行することがわった。一方、同じ条件でメソ結晶化していないSrTiO3ナノ粒子について実験を行った場合、効率は1%に満たなかった。メソ結晶化により反応効率が1桁向上したことになる。また、生成された電子は比較的大きな表面のナノ結晶に集まるという知見も得られた。
以上の成果から今回開発した光触媒では、紫外線照射によって生成した電子はメソ結晶内部のナノ粒子間を効率よく移動し、消失することなく表面に生成した比較的大きなナノ結晶に集まり、高い効率で水素イオンを還元して水素を生成することが分かった。
研究グループは今回の成果について、「メソ結晶の高い光触媒活性は“メソ結晶の規則的な構造をあえて崩す”という逆転の発想から産み出されたもので、これまでにない新しい材料設計指針の開拓につながる。また、今回対象としたSrTiO3は立方晶であるため、分子吸着や反応のしやすさという点において結晶面による違いはない。したがって、ビルディングブロックであるナノ結晶の大きさと空間配置を制御するだけで、既存システムの光エネルギー変換効率を大きく向上できる可能性が示された」と述べている。
今後はメソ結晶化技術を可視光応答型光触媒に応用することで、太陽光でのエネルギー変換の高効率化を目指す。また今回の研究で対象としたSrTiO3を含むペロブスカイト型金属酸化物は、エレクトロニクス素子の基幹物質であることから、幅広い分野への応用展開も期待できるとした。
なお、今回の研究成果は2017年4月6日(現地時間)にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開された。
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