リチウムイオン電池の状態をAIが監視、オペレーターの負荷を軽減自然エネルギー

GSユアサとNTTコミュニケーションズは、普及が進むリチウムイオン電池システムの状態監視にAIを活用する実証実験を開始する。経験を積んだオペレーターの代わりに、AIが監視を行うことで、運用の効率化を図る狙いだ。

» 2017年10月10日 09時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 GSユアサとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、AI技術の一種であるディープラーニングを活用し、リチウムイオン電池の状態監視を行う実証実験を開始すると発表した。NTTグループのAI関連技術「corevo(コレボ)」を活用し、リチウムイオン電池の状態分析や診断作業の効率化を図る。

 近年性能向上が著しいリチウムイオン電池は、さまざまな用途や地域に導入が進んでいる。太陽光や風力などの発電設備向けや、電力系統などにも導入される事例が増えてきている。これまで導入した電池の状態監視では、定期点検・自動測定で収集した電圧や電流などのパラメーターを用い、あらかじめ想定した関係式や閾値(しきいち)を利用し、経験を積んだオペレーターが分析して診断を行っていた。今後さらに普及が進んだ場合、取り扱うデータ量も多くなり、オペレーターを増やして対応しなければならない状況にあるという。

 両社はこうした課題を解決するため、2016年からAIを活用した電池の状態監視の実現に向けた、電池の種類の分類に関する検証を行ってきた。2016年の検証では、NTT Comが電池の電圧や電流などを時系列で取得したセンサーデータから、ディープラーニングを用いて電池の種類を分類するAIモデルを作成し、学習後のAIモデルに追加学習を施した。その上で学習データを増やすにつれて分類精度がどのように変化するかについて、GSユアサが評価を実施した。その結果、わずかな電池特性の差異を見分け、極めて高い精度で電池の種類を分類できることが確認できたため、今回の新たに状態監視を行う実証実験に取り組むこととした。

 実証実験では、稼働中の蓄電池システムを構成する定置用リチウムイオン電池から取得した電圧や電流などのデータを、ディープラーニングを用いてAIに学習させ、電池の状態監視を行うシステムの基盤構築と検証を行う予定だ。蓄電池システムの測定データをネットワーク経由で収集し、そのデータ群を経験を積んだオペレーターの代わりにAIが分析する。

実証のイメージ 出典:GSユアサ

 今回開発するAI技術を適用した状態監視により、さらに精度の高い効率的な電池状態の検知・予知および制御を行うことが可能となり、安全性、信頼性が向上する。また、ネットワークを介してモニタリングできるようになるため、蓄電池システムのスマート化に寄与すると期待される。

 今後、GSユアサは、蓄電池システムのSOC(State Of Charge、電池の充電状態)・SOH(State Of Health、電池の劣化状態)をより高い精度で確実に把握するとともに、バランス良く必要な電気エネルギーを充放電できる最適な状態に保つことで、蓄電池システムの効率的な運用を行い、地球環境や防災・減災に貢献する製品とサービスを提供していくことを目指すとしている。

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