普通・急速・ワイヤレス――EV充電インフラはどう普及するのか電気自動車(1/2 ページ)

電気自動車やプラグインハイブリッド車の市場拡大が急加速する中、普及を支える充電インフラ市場は今後どのように推移するのか。富士経済がその展望をまとめた。

» 2017年12月01日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 調査会社の富士経済は2017年10月、環境対応車用充電器などの充電インフラの普及状況(ストック市場)について、各国政府の方針を踏まえ調査し、将来動向を「次世代自動車充電インフラ機器のグローバルマーケット展望2017」にまとめた。

 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の市場拡大に伴い、グローバルに充電インフラの普及も一気に進みそうだ。特に普通充電器(パブリック)やワイヤレス給電システムの伸びは著しいと予測されている。

 2020年にかけて、米国でのZEV規制本格化や、欧州での自動車メーカーによるPHVの新発売などにより、EVやPHV市場の拡大が予想される。EVやPHVの所有者による自宅での充電器(プライベート)の設置以外にも、高速道路や幹線道路沿い、商業施設などでの充電器(パブリック)の整備も加速するとみられる。現在普及している充電インフラは、普通充電器と急速充電器であり、急速充電器は高速道路や幹線道路沿いに、普通充電器は商業施設などといったすみ分けがなされている。

 2030年にかけては、欧州を中心とした内燃車販売禁止措置の開始とともに、普通充電器の普及が加速するとみられるが、今後本格的な拡大が予想されるワイヤレス給電システムが急速充電器や普通充電器にとって代わる可能性もあるとしている。2035年にかけては、普通充電器とワイヤレス給電システムの普及がさらに進み、新たに電池を交換する「バッテリースワップシステム」が中国を中心に本格化すると予測する。

充電インフラの普及展望 出典:富士経済

 2035年のエリア別普及予測をみると、日本では急速充電器1万1000本、普通充電器(パブリック)4万7500本、ワイヤレス給電システム20万台、バッテリースワップシステム60システムとする。急速充電器はイニシャルコストの高さと補助金の減額に伴い普及スピードが鈍化しており、低コストの普通充電器の設置が進んでいるが、2025年頃から家庭用のワイヤレス給電システムが普及しはじめ、2030年には公共用にも広がることで、充電器の普及は頭打ちになるとみられる。

 北米の2035年予測は急速充電器5万9500本、普通充電器(パブリック)34万6500本、ワイヤレス給電システム45万台、バッテリースワップシステム200システムとした。同地域ではZEV規制本格化に伴うEVやPHVの販売急増が予想される中、TeslaのSuperchargerをはじめ高速道路や幹線道路沿いを中心に急速充電器、都市部では普通充電器の設置が進んでいる。また、ワイヤレス給電システムも世界に先駆けて市場が立ち上がった。2030年頃には急速充電器の需要は一巡が予想される。ワイヤレス給電システムはオプションなどで自動車への搭載も進み、第三の選択肢として普及が進むとみられる。

 欧州は同急速充電器6万9000本、普通充電器(パブリック)28万6000本、ワイヤレス給電システム35万台、バッテリースワップシステム300システムと予測している。ドイツ系自動車メーカーによるPHVやEVの発売が続くことで、今後充電インフラの整備も加速するとみられ、ドイツ、英国、フランスなどの都市部では短時間充電ニーズが高いため、急速充電器の設置が増えている。更なる時短に向け、急速充電器の高出力化(出力350kW)が進められており、複数の国をまたぐ幹線道路沿いへの超急速充電器の設置が進みそうだ。長期的にはドイツ、フランス、英国をはじめとした内燃車販売禁止措置に伴いEVの普及が加速し、ワイヤレス給電対応のEV、PHVの投入も本格化するとみられる。

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